<論文紹介> ポリドーパミン(PDA)に触媒活性が見つかる|医療用コーティング材としての利用時など、予期しない反応に注意が必要

Chemistry - A European Journalムール貝などイガイ科の貝が作り出す接着タンパク質を模倣した高分子材料ポリドーパミン(PDA)は、不活性で人体に無害とされ、コーティング材として医療用などへの利用が進められています。しかしフンボルト大学ベルリンのJürgen Liebscher教授らは、このポリドーパミンがアルドール反応の有機分子触媒としての活性を持つことを発見し、医療用のコーティングに利用した際などに思いがけない反応を引き起こす可能性があるとして注意を喚起しました。この発見を報告した論文はChemistry - A European Journalに掲載されるとともに、化学ニュースサイトChemistry Viewsで注目論文として紹介されました。

Liebscher教授らは、磁性ナノ粒子をポリドーパミン膜でコーティングし、その上にアルドール反応の不斉有機分子触媒であるプロリンを固定化して反応に用いる実験を行っていました。この方法によって、反応後の触媒を磁力で容易に回収できるようになるため、現在盛んに研究が行われています。

ところが、本来ならプロリンで働くはずのエナンチオ選択が発現せず、鏡像異性体が等量混在するラセミ体が生成するという予想外の結果となりました。研究を進めた結果、コーティングに用いられたポリドーパミン自体が有機分子触媒として働き、反応に影響したことが分かりました。このことは、ポリドーパミンを医療目的や触媒の固定化に用いた際に予期しない反応が起こる可能性を意味するため、注意を要します。

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