<論文紹介> 植物ポリフェノールで簡単に材料表面を無色コーティング|抗菌・抗酸化効果を備え、インプラント医療機器などへの応用に期待 (ACIE)

Angewandte Chemie International Edition植物成分ポリフェノールは、抗酸化作用による健康増進効果があるとされ、それを多く含む赤ワインやココア、チョコレート、緑茶などが一躍ブームに乗ったことで広く一般に知られるようになりました。しかしポリフェノールの使い道は、食物やサプリとして摂取するほかにもあるようです。

米ノースウェスタン大学のPhillip B. Messersmith教授らのグループは、ポリフェノールをさまざまな材料表面のコーティングに使うきわめて簡単な方法を発見し、Angewandte Chemie International Editionで報告しました。
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 ⇒ Sileika, T. S., Barrett, D. G., Zhang, R., Lau, K. H. A. and Messersmith, P. B. (2013), Colorless Multifunctional Coatings Inspired by Polyphenols Found in Tea, Chocolate, and Wine . Angew. Chem. Int. Ed.. doi: 10.1002/anie.201304922 icon_open(オープンアクセス)

緑茶を入れた磁器のカップや赤ワインを入れたグラスを数時間放置してから水洗いすると、見た限りでは跡形もなくきれいになります。しかしカップやグラスの表面には、飲み物に含まれていたポリフェノールが作った無色の薄膜が残っています。そのことは、カップやグラスをAgNO3水溶液に浸すと、銀イオンとポリフェノールが反応して褐変することによって確認できるそうです。

chocolate同グループは、植物ポリフェノールの粉末を緩衝食塩水に溶かした場合に最も効率よくコーティングが生じ、それに浸すだけで、ステンレスなどの金属や撥水性のテフロンなどさまざまな材料表面に厚さ20-100 nmのコーティングを施せることを確認しました。またこのコーティングは、ポリフェノールの抗菌・抗酸化作用を引き継いでいて、さらに付着防止のような機能を追加できることも分かりました。

もともと医用材料を専門に研究していた同グループでは、この性質を利用して、ペースメーカーのような体内埋め込み型医療機器や、食品の包装などへの応用を期待しています。

■ 参考リンク: Sticking Power of Plant Polyphenols Used in New Coatings (Northwestern University プレスリリース)

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