東工大・鈴木寛治教授らが光反応のみでアセトンからオキサトリメチレンメタンの合成に成功|二核ルテニウム錯体を利用し炭素-水素結合を活性化 (Angew. Chem. Int. Ed. Hot Paper)

東京工業大学大学院理工学研究科・鈴木寛治教授らの研究グループは、ルテニウムを水素で結合した集合体(クラスター)「二核ルテニウムテトラヒドリド錯体」の光反応のみにより、最も単純な構造のケトンであるアセトンから直截的にオキサトリメチレンメタンを発生させることに成功、その成果をまとめた論文がAngewandte Chemie International Edition (ACIE)のHot Paperに選ばれました。
 ⇒ Hot Paper: Bimetallic Activation of 2-Alkanones through Photo-Induced α-Hydrogen Abstraction Mediated by a Dinuclear Ruthenium Tetrahydride Complex

オキサトリメチレンメタンは機能性有機分子の合成に有用な鍵中間体ですが、従来の金属錯体触媒によるアセトンからの合成法では多くのステップを要し、また副生成物の産出が避けられませんでした。鈴木教授らによる今回の光反応は、アセトンの炭素-水素結合を活性化しダイレクトに切断するもので、反応機構的に新しく、しかも最小の反応ステップ数で副生成物の産出を伴わないプロセス的に優れた方法です。

今回の反応に用いられたルテニウムクラスターは、1つの錯体の中に2つ以上の金属が共存する「複核錯体」の例です。こういった複核錯体が有機分子を強固に捕らえて活性化する性質を利用して、従来の単核錯体触媒では達成できなかった触媒的合成反応が実現する可能性があり、今後の研究の発展が期待されます。

 ■ 論文はこちら (本文を読むにはアクセス権が必要です)
 ⇒ Suzuki, H., Shimogawa, R., Muroi, Y., Takao, T., Oshima, M. and Konishi, G.-i. (2013), Bimetallic Activation of 2-Alkanones through Photo-Induced α-Hydrogen Abstraction Mediated by a Dinuclear Ruthenium Tetrahydride Complex . Angew. Chem. Int. Ed.. doi: 10.1002/anie.201208185

■ 研究最前線「金属クラスターの光反応による革新的 『炭素―水素結合活性化法』を開発」(東工大プレスリリース)

☆ ACIEでは、急速な展開によって注目を集めている分野における研究で、編集委員が特に重要性を認めた論文をHot Paperとしています。
 ⇒ 最近Hot Paperに選ばれた論文

カテゴリー: 論文 タグ: パーマリンク