<論文紹介> 雄ドブネズミの性フェロモン特定に成功 / ネズミ捕りの効果が10倍に (ACIE Hot Paper)

Credit - Pakhnyushchy/Shutterstock

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ドブネズミ(brown rat, 学名 Rattus norvegicusは世界各地に生息し、病原体を媒介したり、穀物や食料を荒らすなどさまざまな害をもたらす害獣です。対策として、ドブネズミを餌などでおびきよせて罠や毒を使って捕獲するいわゆるネズミ捕りが使われますが、ドブネズミは見慣れないものがあると警戒して近寄らない性質をもつため、なかなか効果が上がらず関係者を悩ませてきました。

害獣駆除の専門家の間では、一度ネズミが捕まったネズミ捕りには、新しいネズミ捕りよりも次のネズミがかかりやすいことが知られていて、前のネズミが残した何らかの匂い成分が働いていることを示唆していました。サイモンフレーザー大学(カナダ)のGerhard Gries教授らのグループは、ドブネズミが使った寝床から採取した揮発性物質を分析し、雄ドブネズミの性フェロモンの候補化合物6種(2-ヘプタノン、4-ヘプタノンなど)を特定しました。野生のドブネズミを使ってフィールド実験を行った結果、それらの化合物を混合した人工の性フェロモンを仕掛けたネズミ捕りでは雌ドブネズミが32匹捕まり、3匹に終わった通常のネズミ捕りの10倍の効果を上げました。一方、雄のドブネズミは通常のネズミ捕りよりも逆に捕まりにくくなりました。Gries教授らは、フェロモンを感知した雄は、別の雄の縄張りと感じて遠ざかったものと推測しています。

この成果を報告した論文はAngewandte Chemie International Edition (ACIE)に掲載され、同誌の注目論文Hot Paperに選ばれました。

Angewandte Chemie International Edition

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