<論文紹介> 飲み込める注射器! 体の内側から、消化管の壁に薬剤を注射する「マイクロニードル」をMITなどが開発

doctor大人になっても注射が苦手という人は多いでしょう。実際、投薬が必要な患者のほとんどは、注射と飲み薬(経口投与)のどちらかを選べるなら後者を選びます。しかし、薬剤の中でもインスリンのようにタンパク質を基にした「生物学的製剤」は、分子サイズが大きいために消化管から吸収されにくく、また消化管を通過する際に胃酸・酵素・細菌などの影響で活性を損なうといった難点があることから、経口投与に適さないとされてきました。

この課題を克服するため、MITとマサチューセッツ総合病院(MGH)の共同研究グループは、口から飲み込んだカプセルが胃を通過したのちに注射器に変身して、消化管の壁に薬剤を注射するという新技術「マイクロニードル」を開発しました。この成果を報告する論文が、このほどJournal of Pharmaceutical Sciences誌に掲載されました。

☆ YouTube動画による解説

同グループの試作品は、長さ2 cm・直径1 cmのカプセル状になっていて、胃酸によるpH変化で溶けるコーティングが長さ5 mmの注射針(マイクロニードル)を覆っています。飲み込んだカプセルが胃を通過して腸内の狙った場所に到達すると、コーティングが溶けて表に出てきたマイクロニードルが腸の壁に刺さって、体内に薬剤を注入します。豚を使った実験では、腸内でインスリン注射を行った後、組織に損傷を与えることなく安全に排出されることが確認されました。また、マイクロニードルによる注射は、同量のインスリンを皮下注射した場合より血糖を下げる効果が高いことも確かめられました。

同グループでは今後、注射針に生分解性の材料を用いるなどの改良と安全性確認を進める予定で、実用化によって抗がん剤などの効果的な投与につながることを期待しています。

Journal of Pharmaceutical Sciences

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