<論文紹介> 米国などで市販の運動前サプリ「Craze」から、覚醒剤メタンフェタミンの類縁体N,α-DEPEAが見つかる|安全性に疑念(無料公開中)

Drug Testing and Analysis米国などで広く市販されている、運動前に服用する(プレワークアウト)サプリメント「Craze」から、覚醒剤メタンフェタミンの類縁体N,α-DEPEA (N,α-diethylphenylethylamine) が検出されたという研究結果が、Drug Testing and Analysis誌で報告されました。この化合物の人体への影響については研究例がありませんが、著者らは政府の規制当局に対して迅速な対応を求めています。

「Craze」は、運動前に飲むとパフォーマンス向上を引き出すサプリメントとして人気があり、米国内の店舗のほか、ネット通販を通じて米国外でも広く販売されています。今回、ハーバード・メディカルスクールのPieter Cohen博士らの国際的な研究グループは、ネット通販や店舗で入手したCrazeのサンプル3種を、超高速液体クロマトグラフィー(UHPLC)で分析しました。その結果、すべてのサンプルから、パッケージに表示されていないN,α-DEPEAが検出されました。

N,α-DEPEAは、覚醒剤メタンフェタミンと構造が類似した化合物で、過去に韓国で押収された例があるなど、脱法ドラッグとしての使用が疑われています。N,α-DEPEAは興奮・依存作用を持つ可能性がありますが、人体に対する影響に関してはこれまで報告例がなく、明らかになっていません。

Crazeのパッケージには、ラン科の植物デンドロビウムから抽出された数種の合法なフェニルエチルアミン(phenylethylamine)を含むと書かれています。今回見つかったN,α-DEPEAもフェニルエチルアミンの一種で、パッケージに表示のある化合物の異性体ですが、N,α-DEPEA自体はデンドロビウムなどの植物中に見つかった例が知られていません。また、今回検出されたN,α-DEPEAの含有量は、一回の服用分で21~35mgにも相当し、製造中に偶然混入したとは考えにくいようです。

今回の論文の筆頭著者であるCohen博士は、仮に今回の結果が規制当局によって確認された場合は、FDA(アメリカ食品医薬品局)は消費者に向けて警告を発するとともに、N,α-DEPEAを含むサプリの販売停止を実行する必要があると語っています。同時にCohen博士は、現在発生している米国政府機関の閉鎖によりFDAの措置が遅れ、安全性に疑念のある商品の流通が長く続きかねないとして懸念を表明しています。

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