<論文紹介> 3Dプリンタを使った新材料開発|MITの研究グループが、骨を模した高強度の複合材料の合成に成功(Adv. Funct. Mater.)

Advanced Functional Materialsダウンロードしたデータから銃を製造できるとして騒ぎになった記憶も新しい、最近話題の3Dプリンタですが、材料研究の分野でも強力なツールとして大きな可能性を秘めているようです。

MITの研究グループは、コンピュータモデルを基にした3Dプリンティングによって、2種類のポリマーから骨の構造を模倣した高強度の複合材料を合成することに成功し、その成果をAdvanced Functional Materials誌で報告しました。

 ⇒ Dimas, L. S., Bratzel, G. H., Eylon, I. and Buehler, M. J. (2013), Tough Composites Inspired by Mineralized Natural Materials: Computation, 3D printing, and Testing. Adv. Funct. Mater.. doi: 10.1002/adfm.201300215 (本文を読むにはアクセス権が必要です)

bone骨の主成分となっているのは、柔らかいコラーゲンと破壊に対して脆いミネラルの一種ヒドロキシアパタイトですが、両者が階層構造をなすことで軽く丈夫な骨を作り上げています。MITのグループは、コンピュータシミュレーションに基づいて骨の構造を模した複合材料のモデルを作り、複数の材料を組み合わせることのできる最新の3Dプリンタで2種類のポリマーから試作品を製造しました。数時間で出来上がった複合材料は、破壊に対して元のポリマーの22倍の強さを持つことが確認されました。

今回の成果が示すように、3Dプリンタを使うことで、コンピュータで設計した複雑な構造を持つ複合材料を短時間で試作して、強度などの性質を実際にテストできるようになります。モデリングと3Dプリンティングの技術は今後急速な進歩が見込めるため、自然界に存在する物質を模倣するだけでなく、これまでの常識を大幅に覆すような新材料の開発につながることも期待されます。

■ この論文の内容は、材料科学のニュースサイトMaterials Viewsで紹介されています。
 ⇒ Printing artificial bone (June 20, 2013, Materials Views)

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