<新刊紹介> 化学の視点から見た「恋愛と性」 - Chemistry of Love and Sex はこんな本

Chemistry of Love and Sex
 Madalena M. M. Pinto
 ISBN: 978-3-90639-068-0
 Paperback / 120 pages / October 2012
 US $32.50
 (上の書名または表紙画像をクリックすると、内容情報にリンクします)

書名を見ただけでは内容を予想するのが難しいかもしれませんが、本書“Chemistry of Love and Sex”は、人の恋愛感情や性的欲求・行動に影響を与えるさまざまな化学物質について、現在分かっていること(また分かっていないこと)を整理してくれる入門書です。

第1章は、性ホルモンや神経伝達物質など内因性の物質に焦点を当て、それらの化学・生化学的側面について解説を加えています。次の第2章では、体臭の原因物質やフェロモンなど、対人間のコミュニケーションに関わる物質が取り上げられます。例えば、女性はアンドロステノンのようなムスク系の香りに男性よりも敏感で、しかも月経周期に伴って感度が変化するといった知識が、出典の文献とともに提示されます。また、「フェロモン」という語は日常的に使われ、その働きを信じている一般の人は多そうですが、フェロモンが実際に人の行動に影響を与えるという説は今のところ科学的根拠に乏しいことが、主要な実験結果によって示されます。

続く第3章は、外因的な化学物質として、経口避妊薬(ピル)や性的不能治療薬を取り上げています。例えば、一人っ子政策下の中国で盛んに試験が行われた男性用避妊薬ゴシポールは、副作用が見つかったため研究が下火となっていましたが、近年になって副作用を回避するための研究が新たに進んできているそうです。

このように、化学のさまざまな領域にまたがるトピックが取り挙げられていますが、根拠のない俗説がまことしやかに語られやすい分野だけに、科学的な裏付けの有無を確認したり、典拠として挙げられた文献を読み進めるための出発点として本書は役立ちそうです。少なめのページ数で、読みやすく書かれています。著者は、ポルトガルのポルト大学に勤める医薬品化学の教授です。

 本書の目次 

Glossary
1. Endogenous Chemistry
1.1. Steroid Hormones
1.2. Brain Chemistry

2. Chemical Communication in Love and Sex
2.1. Introduction
2.2. ‘Bad Odor’, ‘Good Odor’, ‘No Odor’ and a Relationship with Chemical Communication in Humans
2.3. Pheromones
2.4. Conclusions

3. Exogenous Molecules Intervening in Love and Sex
3.1. Drugs
3.2. The Cosmeceuticals Also Can Help …
3.3. Food Components That May Influence Love and Sex

4. Conclusions
4.1. Everything Is Connected in Love and Sex

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