スター・トレックで「赤シャツを着た乗組員は殺されやすい」のは本当か、統計学で検証してみた (Significance Magazine)

SFテレビドラマの古典「スター・トレック」は、1966~69年に放映された初代シリーズの後も熱狂的なファンに支えられ、繰り返し新シリーズや劇場映画が作られてきました。今年2013年も、12作目の映画「スター・トレック イントゥ・ダークネス」(リンク先は公式サイト)の公開が予定されています。

このスター・トレックのファンの間で知られた「お約束」のひとつに、「赤シャツを着た乗組員はすぐに殺される」というのがあります。実際、初代シリーズ以後、“redshirt”という語が「フィクション作品中で登場直後に死んでしまう、殺され役」という意味に使われるようになったそうです。

では本当に、赤シャツの乗組員は、ほかの乗組員より殺される確率が高いのか…初代シリーズのデータに基づいてまじめに検証した記事が、英国王立統計学会・米国統計学会とWiley-BlackwellによるウェブマガジンSignificance Magazineに掲載されました。
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初代シリーズで宇宙船エンタープライズ号の乗組員は、所属部署によってユニフォーム(シャツ)がに色分けされています。同シリーズ中に死亡した乗組員は55人ですが、そこからシャツの色が不明の乗組員を除くと40人になります。この40人の死亡者のうち60%にあたる24人が赤シャツだったので、「赤シャツの乗組員は殺されやすい」という説は一見正しそうです。

しかし、各色のシャツを着た乗組員の総人数に対する割合ではどうなるでしょう。スター・トレックには製作元のパラマウント社公認の設定資料が存在し、それによると赤シャツを着る「機関・船務・保安」各部の乗組員の数は239人です。従って赤シャツの乗組員の死亡率は24/239 = 10.0%となります。この率は、青シャツ(科学・医療部)の5.1%(7/136)よりは高いですが、金シャツ(指揮・操舵部)の13.4%(9/55)より低く、三色のうち2番目となっています。

赤シャツの乗組員の内訳をさらに詳しく見てみると、総勢239人のうち保安部(security)の人員は90人です。保安部以外で赤シャツを着ている人数のほうが多いんですね。しかし、赤シャツの死亡者24人のうち18人が、保安部に集中しています。保安部は、元の90人のうち20%にあたる18人を失った、ひときわ危険度の高い部署というわけです。

上からリンクしている元記事では、「ベイズの定理」に基づく詳細な確率計算が行われていますが、興味のある方は原文を見ていただくとして、結論は「赤シャツを着ているからといって殺されやすいわけではない。しかし、所属が保安部であれば話は別」ということになるそうです。

ちょうどThe International Year of Statisticsの今年、硬軟織り交ぜた統計学コラムが載るSignificance Magazineをときどき覗いてみてはいかがでしょうか。当ブログでも、これまでに次のような人気記事をご紹介しています。

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