<記事紹介> 成熟した高分子科学はアイデンティティ喪失の危機? いま取り組むべき本来の課題を考える(Chi Wu教授コラム)

世界的な高分子化学者である香港中文大学のChi Wu教授が、今日における高分子科学の存在意義を問いかけるコラムをMacromolecular Chemistry and Physics誌に寄稿しています。
 ⇒ Wu, C. (2013), What Are Core Polymer Chemistry and Physics?. Macromol. Chem. Phys., 214: 132–134. doi: 10.1002/macp.201200417 (無料公開)

第二次大戦後に大きな発展を遂げた高分子科学は、今や巨大な産業となり、私たちはいつも高分子製品に囲まれて生活しています。しかしその一方で、高分子科学は既に成熟の段階に入り、研究者は「次に何をしたらいいのか?」という問題に直面しているとWu教授は見ています。同教授は、多くの研究機関で、従来の高分子科学が「ナノ」「ソフトマター」「自己組織化」「超分子」のような新しい名前で衣替えしているのがその表れだと言います。

Macromolecular Chemistry and Physics誌に掲載される論文の主題を分析すると、ここ数年は「ブロックコポリマーの自己組織化」と「リビングフリーラジカル重合」が二大人気テーマとなっていて、この二つで掲載論文全体の40%近くを占めるようになっているそうです(2000年代初頭の15-20%から増加)。Wu教授は、これら二つが非常に重要な研究テーマであることは確かだが、いずれも「コアな」高分子科学ではなく、高分子科学はアイデンティティを徐々に失ってきていると考えます。高分子化学者は、たとえ困難であっても、新しい触媒や合成法、重合プロセスの開発といった本来の課題に取り組むべきだというのが同教授の考えです。

■ このコラムは、Macromolecular Chemistry and Physics誌の創刊70周年記念号に掲載されました。 ⇒ 同号の目次

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