<論文紹介> ロタキサン-金錯体による刺激応答性触媒 / 金属イオン添加によって触媒活性と立体選択性が変化 (ACIE)

Credit - Marynka/Shutterstock

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複数の分子が化学結合ではなく機械的な結合によって連結した「インターロック分子」のひとつであるロタキサン (rotaxane) は、環状分子がダンベル型の分子の軸を取り囲むユニークな構造をもっています。ロタキサンは、発見当初は合成が非常に困難とされてきましたが、近年になって合成技術の進歩により容易に得られるようになってきたことから、研究対象として注目が高まっています。

英サウサンプトン大学で超分子化学を研究する Stephen M. Goldup准教授らのグループは、このロタキサンと金原子の錯体を合成し、シクロプロパン化反応の触媒としての活性を調べました。その結果、ロタキサン-金錯体は単独では触媒能を全く示しませんが、銅・亜鉛などの金属イオンを補因子として添加すると、ゲスト結合によって触媒活性にスイッチが入り反応の進行が始まることを発見しました。さらに、添加する金属イオンの種類に応じて触媒活性と立体選択性(ジアステレオ選択性)が変化することも分かりました。

ロタキサン金属錯体が金属イオン添加のような外部刺激によって触媒活性を変える「刺激応答性触媒」としての性質を示すことは、今回が初めての報告例となります。触媒活性と立体選択性を任意に制御できる新規な触媒の開発につながるアプローチとして、今後の発展が期待されます。

Angewandte Chemie International Edition

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