<論文紹介> ミツバチの目で見ると、花はどんな色? 視覚機能に合わせてデジカメ写真を変換し、生物に見える世界を再現する無料ソフト

Credit - Sergey Lavrentev/Shutterstock

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人間が見ている世界と、他の生物の目に映る世界は、実は同じではありません。生物によって視覚機能が異なるため、同じ風景を見ても違った色や明るさで感知しているからです。例えば人間の目の網膜には、特定の波長の光に反応して色覚をもたらす錐体細胞が赤・緑・青の3種類あります。それに対して哺乳類の多くは、青と黄の2種類の錐体細胞しか持っていません。一方、多くの鳥類・爬虫類・両生類・昆虫は4種類の錐体細胞を備え、人間には見えない紫外線を感知できるものも少なくありません。

そういった生物種の視覚についての知識は、生態学などの分野で重要な意味を持ちます。例えば、生物が保護色で天敵から身を守ったり、花がミツバチなどの虫を引きつけたり、鳥が色鮮やかな羽で異性にアピールしたりする仕組みは、人間の目ではなく実際の生物にどう見えるかが分からなくては正しく理解できません。デジタルカメラ(デジカメ)で撮った写真を、特定の生物に見えているように変換できればさぞ便利でしょうが、そのための使いやすいソフトがなかったため、これまでの研究者はフォトショップなどで細かい手作業による画像処理を強いられてきました。

英エクセター大学のJolyon Troscianko博士らは、あらかじめ登録した生物の視覚機能に合わせてデジカメ画像のフィルタ処理を行い、それぞれに見える世界を容易に再現するソフトの開発に成功しました。登録されているのは鳥のアオガラ、クジャク、ミツバチ、フェレット、魚のタラ、小型ザメなど、錐体細胞の種類が0~4と異なる生物の視覚機能の情報で、例えば人間の目には紫色に見える花が、紫外線まで見えるミツバチの目にはどのように映るかを簡単な画像処理で知ることができます。このソフト micaTookbox (Multispectral Image Calibration and Analysis Toolbox) は、オープンソースの画像処理ソフトImageJのプラグイン(機能拡張ソフト)として利用できるもので、オンラインで無料配布されています。

Troscianko博士らがこの成果を報告した論文は Methods in Ecology and Evolution誌で8月6日オンライン公開され、NY Times紙に採り上げられるなど大きな反響を呼んでいます。

Methods in Ecology and Evolution

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