<論文紹介> 食事前の飲酒で食欲が増す「アペリティフ効果」を神経科学で解明 / アルコール摂取後は食べ物のにおいに対する脳の反応が活発化

食事前にシャンパンなどを飲む「食前酒(アペリティフ)」は、食欲を高めてその後の食事をおいしくする効果があると言われています。また、飲んだ後はいつも締めのラーメンが食べたくなるという人も少なくないでしょう。このように、飲酒には食欲を増進させる効果があるようですが、そのメカニズムはこれまで明らかになっていませんでした。

米インディアナ大学医学校の研究グループは、この「アペリティフ効果」の解明のため、食べ物のにおいに対する脳の反応にアルコール摂取が与える影響を調べる実験を行い、その結果を肥満研究の主導的な学会The Obesity Societyの公式誌 Obesity で報告しました。

Obesity

Credit - Assembly/Getty Images

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標準的な体重の女性35人が参加したこの実験では、消化器系の働きによる影響を排除するため、静脈点滴で被験者にアルコールを投与しました。その後ローストビーフなど食べ物のにおいと食べ物以外のにおいを嗅いでもらい、その間の脳の反応(BOLDシグナル)をfMRIスキャンで計測しました。また比較のため日を改めて、生理食塩水をプラセボとして投与したうえで同じ実験を繰り返しました。

その結果、アルコールが投与された被験者では、食べ物のにおいに対して脳の視床下部がより活発に反応することが分かりました。またfMRIスキャンを受けた後の被験者に食事を出したところ、アルコール投与後に食べる量はプラセボ投与後と比べて平均で7%多くなりました。ただしこれには個人差があり、逆にプラセボ投与後のほうが多く食べた被験者も約1/3いました。

今回の実験結果は、胃腸の働きとは別に、アルコールが脳に直接作用して食欲を増進させる効果があることを示唆するものといえます。同グループでは、肥満が深刻な問題となっている米国でワインを中心にアルコール消費量が増えていることを懸念し、この研究が飲酒と過食とを関連付けるメカニズムの理解につながることを期待しています。

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