<論文紹介> アルミを食べて動く液体金属ロボット? 合金ガリンスタンの粒がシャーレの壁に沿って回り続ける自己推進型モーターに (Adv. Mater.)

Advanced Materials中国・清華大学のJing Liu教授らのグループは、液体金属合金ガリンスタンの粒を水酸化ナトリウム水溶液入りのシャーレに入れてアルミフレーク(アルミ箔を粉末化したもの)を吸収させると、外部から力を与えなくてもシャーレの中をぐるぐる回り続けることを発見し、液体金属による初の「自己推進型モーター」としてAdvanced Materials誌で報告しました。この発見は多くの科学ニュースサイトで取り上げられるなど、ネット上で話題を呼んでいます。

  •  論文  ⇒ Zhang, J., Yao, Y., Sheng, L. and Liu, J. (2015), Self-Fueled Biomimetic Liquid Metal Mollusk. Adv. Mater.. doi: 10.1002/adma.201405438 Angew. Chem. Int. Ed.. doi: 10.1002/anie.201412204 (本文を読むにはアクセス権が必要です)

Liu教授らが用いたのは、ガリウムを主とする液体金属合金ガリンスタンです。直径約5 mmのガリンスタンの粒を水酸化ナトリウム水溶液入りのシャーレに入れると、最初はシャーレの壁に接したまま静止しています。この粒に、あたかもエサを与えるようにアルミフレークを接触させると、ガリンスタンの粒はアルミフレークとアマルガムを形成して吸収するとともに、壁に沿って動き出します。実験では、ガリンスタンの粒の直径の10倍にあたる約5 cm/秒の速さで、1時間以上にわたって動き続けました。(下の動画: New Scientist提供)

Liu教授らによると、この運動はガリンスタンの粒の前後の圧力差と、アルミニウムと水酸化ナトリウムの反応から発生する気泡の力によって引き起こされるとのことです。今回報告されたように外部の力を要せず運動する「自己推進型モーター」はさまざまな固体・液体材料を用いてこれまでにも多く研究され、ナノ~マイクロサイズでは実現していましたが、サイズが大きくなるほど強い推進力を要するため、ミリ~センチメートルのサイズへのスケールアップは困難とされてきました。今回の発見は、液体金属を用いることで自己推進型モーターの可能性を広げるものとして注目されます。

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