<記事紹介> Conservation Biology誌が査読の「二重盲検」化を検討|論文著者の多様性拡大につながるか

Conservation Biology現在ほとんどの論文誌は、査読方針として、査読者には誰が書いた論文か分かるのに対して著者の側は誰によって査読されたかを知ることができない一重盲検(single-blind)方式を採用しています。一重盲検による査読に対しては、著者の名声や、性別・出身国・年齢などの属性によって査読者の判定にバイアスが生じる可能性があるとの懸念が一部の研究者から寄せられています。著者の属性によるバイアスを排除し公平を期すために、査読者にも著者が誰かを分からなくする二重盲検(double-blind)方式の導入を訴える声が根強く上がっていますが、これまでのところ大勢を変えるには至っていません。

そうした中、The Society for Conservation Biology(= SCB・国際保全生物学会)の公式誌 Conservation Biology が査読の全面的な二重盲検化を積極的に検討していることを、米ノースカロライナ大学チャペルヒル校の海洋生物学者 E. S. Darling博士が同誌への寄稿で明らかにしました。

この記事でDarling博士は、同誌の動きを歓迎するとともに、これまでに他誌で行われた査読の二重盲検化の結果に関する文献を整理しています。それによると、二重盲検の導入後に女性研究者を筆頭著者とする論文の採択率が高まった例が報告されている一方、それに反する結果となった例もあり、査読の二重盲検化がもたらす影響についてははっきりした結論が出ていません。また自分の専門分野を熟知した査読者が論文を読めば、名前を見なくても誰が著者か見当がつくので二重盲検化は意味がないという意見もありますが、医学誌を対象にしたある調査では、査読者が論文著者を正しく言い当てられるのは全体の40%に留まるとの結果が出ていて、やはり一概には言えないようです。

Darling博士は、同誌のほか既に二重盲検による査読を採用済みの論文誌が、女性やマイノリティの比率など論文著者の多様性に与えた影響を定量的に分析することを期待しています。Natureの一部姉妹誌などでは、著者が二重盲検による査読を選択できるオプションを用意していますが、同博士は、そのような二重盲検化の部分的な導入よりも、全面的な二重盲検化のほうがその効果を定量的に評価するうえで有効と考えています。

読者の皆さんは、論文著者・査読者としてこの動きをどのように受け止めますか?

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