<論文紹介> 木材パルプから生まれた「構造色フィルム」

cellulose_filmCD・DVDの記録面が虹色に光るように、表面の微細構造による光の干渉から生じる発色は「構造色」と呼ばれます。色素が特定の波長の光を吸収することによって発色するのとは原理を異にし、色素と違って紫外線などを受けても色あせることがありません。構造色は、自然界ではタマムシやモルフォ蝶のような昆虫や貝殻の内側などのほか、一部の植物にも見られることが知られています。その代表例がアフリカ産の果実ポリア・コンデンサータ (Pollia condensata) で、細胞壁の特殊な構造によって青いメタリックな輝きを放ちます。

このポリア・コンデンサータにヒントを得た英ケンブリッジ大学のSilvia Vignolini博士らのグループは、植物の細胞壁を構成する繊維質セルロースのナノ結晶(CNC)を自己集合させることによって、鮮やかな構造色を発するフィルム(右上)の合成に成功しました。CNCを抽出するための原料には、紙の原料でもある木材パルプが使われました。フィルムを乾燥する際の湿度を調節することによって発色を制御できることも確認されました。

Advanced Optical Materials木材パルプのように豊富・安価でしかも安全な原料から構造色フィルムが得られた意義は大きく、今後新規な発色材料の開発につながることが期待されます。この成果を報告した論文はAdvanced Optical Materials誌でオープンアクセスで公開されるとともに、材料科学ニュースサイトMaterials Viewsで注目論文として紹介されました。

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