「準結晶」の発見者ダン・シェヒトマン教授(2011年ノーベル化学賞受賞)にChemistry Viewsがインタビュー

準結晶 (quasicrystal) の発見により2011年ノーベル化学賞を受賞したイスラエルの化学者ダン・シェヒトマン (Dan Shechtman) 教授 のインタビュー記事が、化学ニュースサイトChemistry Viewsに掲載されました。準結晶発見の意義や発見時のエピソードについては既に多くの記事が書かれていますが(例えばChem-Stationさんの受賞速報記事、今回は教授への直接インタビューということで、教授の人柄や個人的な思いが自身の言葉で伝わるものとなっています。このインタビューは、今年7月にリンダウ・ノーベル賞受賞者会議の場で行われました。

教授が準結晶を初めて発見した1982年当時、それまでの常識を覆すような発見だったため、周囲の研究者になかなか受け入れられなかったことはよく知られています。教授自身は、自分の発見に揺るぎない自信を持っていて、「間違っていると思うなら追試してみろ、本で読んだ知識だけを根拠に間違いだと言うな」と言い続けたそうです。

教授への批判者の中でも最大の強硬派は、20世紀最大の化学者のひとりライナス・ポーリング(1954年ノーベル化学賞受賞者) で、彼は自分が亡くなる1994年まで十年間にわたって、準結晶を否定する論陣を張り続けました。論争が始まって数年のうちには、研究の進展によって誰の目にもポーリングの誤りが明らかになっていましたが、彼は頑としてそれを認めず、ついにはこの問題に関するポーリングの論文が多くのジャーナルからリジェクトされるに至りました。論争の勝者であるシェヒトマン教授にとっても、偉大な化学者が晩節を汚すのを見せられる苦い思い出となったようです。

準結晶が1982年まで発見されなかった理由は何かというインタビュアーの質問に対して、シェヒトマン教授は、準結晶の発見には電子顕微鏡が不可欠で、電子顕微鏡で観察可能となるまで準結晶を成長させるのが困難だったことを挙げています。教授は、発見には単に電子顕微鏡を使えるだけでなく、そのエキスパートである必要があったとして、若い学生に対しても、単に知識の幅を広げるだけでは不十分で、特定の分野でずば抜けた強みを身に付けることが大事と教えているそうです。

インタビューの最後で触れられている「準結晶ネクタイ」(準周期配列のデザイン)は、インタビューページの写真では分かりにくいですが、このページにあるもののようです。シェヒトマン教授が所属するテクニオン工科大学がノーベル賞受賞記念に作ったものですが、初回製作分が大好評でたちまちなくなり、追加製作した5千本もそろそろ品切れになるそうです。話のタネになるだけでなく、なかなか洒落たデザインでいいですね!

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