未知の金属内包フラーレンを官能基化により単離可能に|名古屋大・篠原久典教授らの論文がAngew. Chem. Int. Ed.のVIPに選ばれる

Metallofullerenesナノカーボン物質の研究に長年取り組み先駆的な成果を上げている名古屋大学大学院理学研究科・篠原 久典教授の研究室が、フラーレンの中空の骨格内に金属原子を取り込んだ「金属内包フラーレン」を官能基修飾によって安定化・可溶化することで、炭素数の異なる金属内包フラーレンの混合物からの単離を可能にする方法を開発しました。この成果はAngewandte Chemie International Edition (ACIE) で報告され、同誌の注目論文VIP (Very Important Paper)に選ばれました。

金属内包フラーレンの製造にはアーク放電法が一般的に用いられますが、アーク放電で生成したススの中には、高比率で含まれるC60・C70金属内包フラーレンのほかに、C72・C74など炭素数が異なる金属内包高次フラーレン(スモールバンドギャップ金属内包フラーレン)が少量混在しています。しかし、そういった金属内包高次フラーレンの多くは反応性が高く、またトルエン・二硫化炭素などの有機溶媒に難溶なため、単離が困難です。そのため、質量分析で検出されながらこれまで単離された例のない金属内包フラーレンがいくつも残っていて、それらは”missing metallofullerenes”(未知の金属内包フラーレン)と呼ばれています。この問題が、金属内包フラーレンの研究において大きな障害となっていました。

篠原教授らは、アーク放電時にPTFE(ポリテトラフルオロエチレン、テフロン)を用いることにより、トリフルオロメチル基で修飾された金属内包フラーレンの混合物を生成することに成功しました。トリフルオロメチル化された金属内包フラーレンは、有機溶媒に可溶かつ安定的になるため、炭素数が異なる金属内包フラーレンの単離が容易になりました。この方法はさまざまな金属に対して使えることも確認され、実験ではイットリウム内包フラーレンY@C70の単離に初めて成功しました。今後、この手法によって新規な金属内包フラーレンの単離と物性の研究が進展することが期待されます。

■ ACIEでは、二人の査読者が特に重要性を認めた論文をVIP (Very Important Paper)に選んでいます。
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