米国の大学での学部生向け化学教育 - Chemistry Viewsが教員にインタビュー

学部教育を中心とする米国の大学California State Polytechnic University, Pomona で有機化学を教えるLaurie Starkey 教授が、化学ニュースサイトChemistry Viewsでインタビューに答え、教員としての日々の実践について語っています。
 ⇒ Laurie Starkey on the Challenges of Teaching Organic Chemistry

Starkey 教授は、大学院生の時にティーチング・アシスタントを務めたことから教育の楽しさに目覚めたそうですが(UCLAでOutstanding Teaching Assistant Awardを受賞)、研究中心大学であるUCLAでは教員が研究の片手間でしか教育に取り組んでいないのを見ていて、教育を自分のキャリアとして考える気にはならなかったそうです。しかし、学部生向けの教育を主とする現在の大学に勤めるようになって、化学教育が自分にぴったり合っていることが分かったそうです。

アメリカの大学では、有機化学の授業は要求される勉強量が特に多いことから”weed-out”(ふるい落とし)の授業として知られ、出席する学生はかなりの不安を持って臨むのが常なので、教授はまず学生の不安を払拭し、化学が大変なだけでなく楽しいものでもあることを強調するそうです。毎回の講義の最初には、「クリッカー」と呼ばれる無線端末を学生に持たせ、教授が出す選択式の質問に対して正しいと思う答を「投票」させ、教授はその結果集計を見ながら、それぞれの答が正しい理由・誤っている理由を説明します。クリッカーは学生の積極的な参加を促すのに役立っているそうです。

またStarkey 教授は最近、初学者向けの有機合成の教科書”Introduction to Strategies for Organic Synthesis”をWileyから出版しました。教授が院生時代に初めて有機合成の講義を受けたとき全く内容が理解できず、適当な教科書を探したが上級者向けの本しか見つからなかったため苦労したそうです。自分が教える側に立った時も、依然として学部生用に使える有機合成の教科書が手に入らないので、それなら自分で執筆しようと考えたとのことです。

今年2月に出版された同書は日本でも好評で、当ブログの「2012年3月のワイリー理工書ベストセラー」で3位にランクインしています。
Introduction to Strategies for Organic Synthesis
Laurie S. Starkey
ISBN: 978-0-470-48409-8
Paperback / 360 pages / February 2012

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