引用と倫理 - 雑誌のインパクトファクターはこのように操作される

論文の引用数とジャーナルのインパクトファクター(IF)は、雑誌・研究者・研究機関の重要な評価指標として広く用いられていますが、雑誌の編集者や研究者がそれらの指標を意図的に操作して引き上げようとする行動もしばしば指摘されてきました。

ライデン大学のJan Reedijk教授は、Angewandte Chemie International Editionに寄稿したEditorial “Citations and Ethics”(引用と倫理)の中で、編集者が自分の雑誌のIFを高めるために実行する手段(場合によっては反倫理的な操作の手口となりうるもの)として、次のようなものを挙げています。

  • 引用されやすいレビュー(総説)論文を増やす
  • ファッショナブルな研究領域の論文を優先的に掲載する
  • 多くの引用が期待できる重要な論文を、予め電子版で公開して広く読まれた後に期間を置いて翌年の巻号に掲載し、引用の機会を高める(2011年中に電子版で公開されていても、翌年の巻号に掲載されれば「2012年の論文」として扱われるため。「過去2年間の掲載論文」というIF算出方法の抜け道を利用するもの)
  • 編集者が自分の雑誌の重要論文を、他のあちこちの雑誌で称賛する
  • 編集者が、毎号のEditorialの中で自分の雑誌の論文を引用する(Editorialはインパクトファクター算出時の「分母」にはカウントされないが、そこでの引用は「分子」としてカウントされる)
  • 論文の投稿者に、同じ雑誌の過去2年間の論文からの引用を追加するよう強制する

Reedijk教授は、IFを利用する際には操作の可能性を考慮して慎重に解釈すべきであり、また教員は学生に倫理的な引用のしかたを教えるべきと結んでいます。

⇒ 元の記事はこちら (無料公開されていて、どなたでも本文をお読みいただけます)
Reedijk, J. (2011), Citations and Ethics. Angewandte Chemie International Edition. doi: 10.1002/anie.201107554

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