<記事紹介> 論文査読者の推薦・除外希望は慎重に / 著者から送られるリストをエディターはこう見ている

多くのジャーナルは、論文を投稿する著者が自分の論文の査読者として適任と考える人物(preferred reviewers)を推薦したり、逆に査読者にしてほしくない人物(non-prefered reviewers)を挙げたりすることを認めています。後者は、発表前の研究成果を知られたくない競争相手の名前を挙げるのが典型例です。

そういった査読者の推薦や除外希望を、論文著者は通常の慣行として深く考えずに行っているかもしれません。しかしジャーナルのエディターの側は、著者による推薦/除外リストをそのまま受け取るのではなく、著者が気付いていない意外な視点から見て判断を加えているようです。BioEssays誌のAndrew Moore編集長が同誌のEditorialで明かすそのあたりの事情を知ると、査読者の推薦/除外希望を慎重に行った方がいい理由が分かります。

Bioessays

多くのジャーナルでは、過去に論文を共著したことのある相手を査読者に推薦しないよう勧告しています。著者はこの点に留意する必要がありますが、Moore氏によると実際にはそれに反する例が珍しくありません。一口に共著関係と言っても程度はさまざまで、Moore氏は、10年前に書いた論文で100人いる共著者の一人だった相手なら問題ないが、より最近の論文で、より少ない共著者の一人なら見過ごせないと考えます。また、今回投稿された論文と過去の共著論文の主題が同じだったかどうかは無関係だとしています。さらにエディターによっては、Googleで著者と推薦査読者の名前を検索して、論文の共著関係以外のつながりがないかチェックするそうです。

挙げられた推薦査読者の中で一人でもそのような例が見つかると、エディターは他の推薦査読者に対しても警戒心を強めます。著者と推薦査読者との隠れたつながりを警戒する一部のエディターは、推薦された査読者とそうでない査読者とを意図的にペアにして選ぶ方針を採っており、また中には著者が推薦する査読者を一切選ばない方針のエディターもいるとのことです。

論文の著者は、エディターの助けになるだろうという善意から多くの推薦査読者を挙げているかもしれません。しかし、推薦査読者が多くなるほど、それらの人物と著者との間に何らかのつながりが見つかるリスクも高まります。そのうち一人でも著者との関係が発覚すれば、他の推薦査読者にまで疑いの目が向けられかねません。エディターがそういった査読者をまとめて避けようとすると、特に研究者数が少ない分野では、論文の主題についての知識が乏しく適任でない査読者が選ばれてしまうことも起こりえます。

推薦査読者と除外希望者をそれぞれ10人も挙げているような投稿論文は、エディターに対して、査読プロセスを著者の都合のいいようにコントロールしようとしているという印象を与えてしまいます。それは、査読の独立性を重んじるエディターが最も嫌うことです。Moore氏は、もし競争を理由に除外希望者を多数挙げざるをえないなら、カバーレターなどで事情を説明するよう勧めています。

一方、研究者数の少ない分野で、しかもこれまでに共著の機会の多かった著者は、共著関係のない査読者を推薦すること自体が難しいかもしれません。そのような場合は、編集部に事情を説明するのも一つの方法ですが、論文のタイトル・抄録・キーワードなどを適切に付けた上で、エディターを信頼して人選を任せるのもよい方法だとMoore氏は指摘しています。

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