<論文紹介> 40年ぶりにヘリセン分子の最長記録を更新 / 東京大・藤田教授、山形大・村瀬准教授らが[16]ヘリセンのワンポット合成を達成 (ACIE VIP)

複数のベンゼン環がらせん状につながる(縮環する)ヘリセン分子は、そのユニークな構造や光学特性が化学者の関心を集めてきました。1955年にNewmanらがベンゼン環6個からなる[6]ヘリセンの合成を報告したのがその始まりです。

これまでに合成された最長のヘリセンは、1975年にMartinらが報告した[14]ヘリセンで、その記録は多くの化学者のチャレンジにもかかわらず40年間破られていませんでした。長いヘリセンの合成が困難な理由は、そのらせん構造にあります。多くのベンゼン環が連結したヘリセンでは、ベンゼン環どうしがらせんの上下で重なるようになり、ベンゼン環が7個以上だと2層の重なりが、13個以上では3層の重なりが生じます。3層構造になると中央の層が上下からの圧迫を受けてひずみを解消しにくくなることが、[13]以上のヘリセンの合成を難しくしています。

東京大学大学院工学系研究科・藤田 誠教授山形大学理学部・村瀬 隆史准教授らは、反応時の副生成物を最小化するように前駆体を設計し、酸化的光環化によって[16]ヘリセンのワンポット合成に成功しました。(収率7%) 40年ぶりにヘリセンの最長記録を更新したこの成果は、Angewandte Chemie International Edition (ACIE) で報告されるとともに、同誌の注目論文VIPに選ばれました。

Angewandte Chemie International Edition

■ ACIEでは、二人の査読者が特に重要性を認めた論文をVIP (Very Important Paper)に選んでいます。
 ⇒ 最近VIPに選ばれた論文

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