<新刊紹介> リチャード3世の遺骨発見の舞台裏 / 調査チームが文理の枠を超えた学際的プロジェクトの過程を語る

The-Bones-of-a-King-199x300The Bones of a King: Richard III Rediscovered
 The Grey Friars Research Team with Maev Kennedy, Lin Foxhall
 ISBN: 978-1-118-78314-6
 Hardcover / 232 pages / March 2015
 US$ 29.95

中世のイングランド王リチャード3世(1452-1485)は、ボズワースの戦いで戦死した後、レスターのグレイフライアーズ修道院に葬られました。しかしその後修道院が取り壊されたため、リチャード3世の遺骨の行方は500年以上にわたって不明となっていました。そうした中で2013年2月、レスター大学の調査チームは市内の駐車場の地下から発見した遺骨をDNA鑑定にかけた結果、リチャード3世のものに間違いないと発表し、歴史学・考古学上の大発見として世界的な注目を集めました。

再発見されたリチャード3世の遺骨は、さまざまな調査を経て今年3月26日にレスター大聖堂に再埋葬されました。それに合わせて同調査チームは、大発見の舞台裏を自ら語る著作 “The Bones of a King” をWileyから出版しました。

本書の出版に企画段階から関わったWileyのマーケティング・マネージャーLeah Alaaniは、ブログへの寄稿で本書の背景を解説しています。“The Bones of a King”: breaking down walls between the Humanities and Sciences, April 1, 2015, Wiley Exchanges blog) それによると、レスター大学の調査チームは歴史学・考古学といった人文系の研究者だけでなく、理系の科学者も参加したきわめて学際性の高いものだったそうです。資料を手掛かりに遺骨の埋葬地をピンポイントで推定した歴史学者・考古学者とともに、遺骨からDNAを採取した遺伝学者・骨学者、さらにリチャード3世の姉の血を引く子孫を特定することでDNAの比較を可能にした系図学者といった幅広い分野の専門家による共同作業なしに、この発見は実現しませんでした。

実際に調査チームに参加したメンバーが一般読者向けに分かりやすく書き下した本書は、文系・理系の共同研究プロジェクトの成功例として読んでも面白そうです。

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