「ゆで卵を生卵に戻す方法」の論文が話題に (ChemBioChem)

eggs今週、「ゆで卵を生卵に戻す方法」が発見されたというニュースが各国のメディアやネット上で話題になっています。日本でも、ASCII.jpのネット記事 “UCI、ゆで卵を「生卵」に戻す方法を発見” などで取り上げられ、ご覧になった方が多いのではないでしょうか。

このニュースは、カリフォルニア大学アーバイン校のGregory A. Weiss教授らのグループがChemBioChem誌に発表した論文が基になっています。Weiss教授らはこの論文で、熱変性により凝固したタンパク質を再生(リフォールディング)し、変性前の状態に戻す簡便で効率的な方法を開発したと報告しました。その方法は、凝固したタンパク質を尿素処理で可溶化した後、流体による機械的圧力(せん断応力)によってタンパク質の塊を解きほぐすというものです。

ChemBioChemこれだけなら専門家以外は関心を持たなかったかもしれませんが、同グループが実験に用いたのが「ゆで卵の卵白」だったことから、「ゆで卵を生卵に戻す方法」として大きく取り上げられる結果になりました。もちろん、ゆで卵を生卵に戻すこと自体が研究の目的だったわけではありません。

生物工学では、大腸菌や酵母を宿主として組換えタンパク質を生産する方法が用いられますが、その際、目的とするタンパク質が変性し不活性なインクルージョンボディー(封入体)を形成してしまうことが多いのが難点です。そういったタンパク質に変性前の活性を取り戻すために、透析法・希釈法などのリフォールディング技術が開発されてきましたが、現状では効率やコストの面で課題が多く残されています。今回の方法による実験では、わずか数分間でリフォールディングが起こり、同教授らは従来の透析法より100倍以上速いとしています。この方法が効率的なリフォールディング技術として確立されれば、製薬・食品工学などへの応用で、現在高価な医薬品の低価格化といった大きなメリットをもたらすことが期待できます。

この論文に対するメディアやソーシャルメディアの反応は、論文ページ上の「Altmetricバッジ」 altmetric_badge から見ることができます。(下図)
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