<記事紹介> Authorshipの問題 - 論文の共著者を決めるときの判断基準、また共著者が負うべき責任は? (AGU誌編集長ブログ)

writing科学論文の共著者数は年々増える傾向にあるといわれますが、好き勝手にどこまでも増やしていいわけではありません。論文の基になった研究に一定以上の貢献をした人を共著者とするのが一般的な基準ですが、実際に線引きをする上では微妙な部分があり、共同研究者のうち誰を共著者に含めて誰を外すかに頭を悩ませる人は多いのではないでしょうか。

共著者の選定をおろそかにすると、研究・出版倫理上の問題につながる場合もあるので注意が必要です。英語では、研究に貢献していないのに名前だけを載せる”guest authorship”、逆に研究に貢献した人(多くは若手研究者)の名前を載せない”ghost authorship”という言い方があり、ともに不適切な行為の典型例とされています。

Journal of Geophysical Research: Space Physics共著者の範囲をどのようにすべきかは、各ジャーナルの投稿規定に明記されているのが普通で、投稿時に個別に確認する必要があります。American Geophysical Union (AGU, アメリカ地球物理学連合) が発行するJournal of Geophysical Research: Space Physicsの編集長を務めるMichael Liemohn氏(米ミシガン大学教授)は、このほど自身のブログでこの問題を取り上げ、同誌のポリシーを解説しています。

同誌の規定では、共著者に加えることのできるのは、該当の研究に対して“significant”(重要)な貢献を果たした共同研究者に限るとされています。significantとまでは言えないが協力してくれた研究者がいれば、Acknowledgment(謝辞)で名前を挙げるのが妥当です。どのくらいの貢献をsignificantと判断するかの線引きは、論文のcorresponding author(責任著者)に任されています。共著者の範囲が適切かどうかをエディターが監視するわけではなく、著者の倫理的判断に委ねられているといえます。

同誌のポリシーでもう一つ重要なポイントは、すべての共著者が投稿論文に対する責任を負うということです。それに加えて責任著者は、共著者全員が論文原稿の最終版に目を通し、報告内容に同意していることを投稿時に宣誓するよう求められます。投稿を受けたAGUは、責任著者だけでなく共著者全員に向けて「あなたが著者になっている論文が投稿された」とメールで通知します。万一身に覚えがない場合は、当事者間ないしはエディターを通じて速やかに解決する必要があります。

ジャーナルによって細部に違いはありますが、このように貢献度の違いにかかわらず共著者を一律に扱うやり方が一般的となっています。それに対しては異論もあり、Liemohn氏が別の投稿で触れているように、各著者が論文のどの部分にどのように貢献したかを細かく示す方が、業績評価において透明性が高まるので好ましいという考え方も出始めています。Liemohn氏自身はその考え方に対してやや否定的なようですが、研究不正が発覚した場合に責任の所在を明確にし、不正行為と無関係な共著者に影響が及ぶのを防げるというメリットにも注目していいかもしれません。

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