2013年イグノーベル賞「心理学賞」はWileyの雑誌の掲載論文から|「酒を飲んだと思うだけで、自分の魅力に自信が高まる」効果を実験で確認

British Journal of Psychology「人々を笑わせ、考えさせる」研究に対して贈られるイグノーベル賞の2013年授賞式が昨日9月12日に行われ、医学賞・化学賞をともに日本人が受賞したことが大きく報道されました。受賞者の皆さま、おめでとうございます!

一方、両賞ほど注目を集めていないかもしれませんが、心理学賞はWileyが出版するBritish Journal of Psychologyで報告された、アルコール摂取が自分の魅力への自信に与える影響についての研究が受賞対象になりました。

■ The 2013 Ig Nobel Prize Winners (イグ・ノーベル賞公式サイト)

■ 論文はこちら ⇒ Bègue, L., Bushman, B. J., Zerhouni, O., Subra, B. and Ourabah, M. (2013), ‘Beauty is in the eye of the beer holder’: People who think they are drunk also think they are attractive. British Journal of Psychology, 104: 225–234. doi: 10.1111/j.2044-8295.2012.02114.x
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drink同賞を受賞した仏グルノーブル大・Laurent Bègue教授らのグループは、酒を飲むこと、あるいは飲んだと自覚することで自分の魅力についての認識がどのように変化するかを調べるために、一連の実験を行いました。

まず、食品メーカーが新しいドリンク製品の試飲テストを行うという架空の名目で、被験者が集められました。被験者の半数はアルコール入り、残りの半数にはノンアルコールだという飲み物を受け取りました。結果に影響を与えるのがアルコールそのものの効果なのか、酒を飲んだと思うことによる心理的な効果なのかを区別するため、出された飲み物には「アルコール入りと称して実はノンアルコール」または「ノンアルコールと称して実はアルコール入り」のプラシーボが半数ずつ混ぜられていました。

試飲を終えた被験者は、その製品の宣伝コピーを考えて、ステージで発表するよう言われました。女性スタッフがビデオ撮影する前で発表を終えた後、被験者はビデオで自分の姿を見て、自分がどのくらい魅力的に思えるかなどの評価項目に点数を付けました。

実験の結果、自分がアルコール入り飲料を飲んだと思っている被験者は、そうでない被験者よりも、自分の魅力に高い自己評価を与えていました。しかもこの評価は、被験者が飲んだのが本当にアルコール入りだったか、ノンアルコールのプラシーボだったかには関わりなく、自分が酒を飲んだと思ってさえいれば評価が高くなっていました。

さらにこの実験では、飲酒した(と思っている)被験者とそれ以外の被験者とで、客観的に見て魅力の差があったかどうかを確かめるため、大学生らに同じビデオを見せて、登場する被験者の魅力を採点してもらいました。その結果、第三者から見て飲酒グループと非飲酒グループの魅力には有意な差がありませんでした。このことから、酒を飲んだ(と思っている)被験者が自分の魅力に自信を高めたとしても、その違いは周囲の他人の目には映らない(論文表題の‘Beauty is in the eye of the beer holder’)と確認されたというのが論文の結論です。

好きな人に告白する前に一杯飲んで度胸をつける、という心理を裏付けたような研究ですね。

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