<論文紹介> 白と黒の微粒子で多彩な色を生み出す「構造色」顔料|名大などの研究グループが開発、色素とは異なる発色原理で、色あせず環境にやさしい

私たちが日常生活の中で目にする色素は、光の反射と吸収によって特定の色を示します。例えば青の色素は、青色の光だけを反射してそれ以外の色の光を吸収するため、人の目には青く見えます。

構造色はそれとは異なる発色原理に基づくもので、光の吸収を伴わず、反射する光の干渉によって色を生み出します。自然界には蝶やタマムシの羽根、真珠など、構造色の例が多く存在しています。

pigment - structural color名古屋大学大学院工学研究科・関 隆広教授、竹岡 敬和准教授大阪大学大学院生命機能研究科・吉岡 伸也助教らの共同研究グループは、この構造色の原理によって発色する顔料の開発に成功し、その成果をAngewandte Chemie International Editionで報告しました。

 ⇒ Takeoka, Y., Yoshioka, S., Takano, A., Arai, S., Khanin, N., Nishihara, H., Teshima, M., Ohtsuka, Y. and Seki, T. (2013), Production of Colored Pigments with Amorphous Arrays of Black and White Colloidal Particles . Angew. Chem. Int. Ed.. doi: 10.1002/anie.201301321 (本文を読むにはアクセス権が必要です)

この構造色顔料は、シリカ微粒子を原料としています。シリカ微粒子自体は白色ですが、粒子のサイズによって反射光の干渉のしかたが変わり、構造色の発色をコントロールすることができます。

構造色を人工的に生み出す試みはこれまでも行われてきましたが、いわゆる「玉虫色」になり、見る角度によって色が変化してしまうことが実用上の難点でした。これは粒子が規則的な結晶構造をもつことによって起こるもので、関教授らのグループは、シリカ粒子の結晶化を防いでアモルファス(非晶質)の状態を保つため、メタノールに混ぜてスプレーで吹き付ける方法を採りました。メタノールはすぐに蒸発し、後には乾燥したシリカ微粒子が非結晶配列のまま対象に固定されます。

このようなアモルファスによる構造色にも、淡くぼんやりした色しか生み出せないという難点がありました。同研究グループは、シリカ微粒子にカーボンブラックを加えることで、彩度(色のあざやかさ)を大幅に向上させました。こういった工夫によって、青からピンクまでのさまざまな構造色を示す顔料を作ることができました。

今回開発された構造色顔料は、単に発色原理が新しいというだけではありません。従来の色素のうち、有機色素は紫外線を受けると次第に色あせし、また無機色素は毒性の高い重金属を含むことが多いという欠点をそれぞれ持っています。今回の構造色顔料は、紫外線による色あせがなく環境にやさしいことから、美術用のほか建築・工業用塗料や化粧品など多くの分野に応用が期待できます。

■ この論文について、化学ニュースサイトChemistry Viewsが注目の研究成果として紹介しています。
 ⇒ Making Colors from Black and White (Chemistry Views, May 28, 2013)

カテゴリー: 論文 タグ: パーマリンク