海上の人工雲でハリケーンを弱める新技術|英米の研究グループが発表

ここ数か月、各地で集中豪雨による災害が相次いでいますが、台風の季節を迎えるこれからは一層の警戒が必要です。台風といえば、同じ発達した熱帯低気圧であるハリケーンも、アメリカでは大きな脅威となっています。2005年にニューオーリンズなどの地域を直撃して壊滅的な被害をもたらした「カトリーナ」の記憶がまだ新しい人も多いでしょう。そのハリケーンの威力を「人工雲」によって弱める技術を、英米の地球科学者による研究グループが考案し、効果のシミュレーションを行った結果を発表しました。
■ 解説記事 ⇒ Cloud Control Could Tame Hurricanes, Study Shows (Wiley Life Sciences Blog)

台風と同様、ハリケーンも熱帯地域の温かい海水からエネルギーを得て大型化します。同グループの構想は、海水を上空に噴霧して人工雲を作るMarine Cloud Brightening (MCB)という技術を使って、ハリケーンが発達する地域の海上に雲を作るというものです。雲で太陽光をさえぎられるので海水温が上がりにくくなり、ハリケーンの発達が抑えられます。同グループによる試算では、ハリケーンの強さを示す「カテゴリー」で本来の1段階下の等級に引き下げられるくらい、ハリケーンを弱体化させる効果があるという結果が出ました。

ただこの技術にも課題があり、ある地域の海水温を操作することで周辺地域の降雨に影響が出てしまう可能性があるそうです。例えば、大西洋で人工雲を作ると、アマゾン川流域で降雨が減少してしまうといった、好ましくない波及効果が起こるリスクがあります。同グループでは、そのようなリスクに対する懸念が払拭されるまで、この手法は実行に移すべきでないとしています。台風の被害を抑えるためにも使えそうな技術だけに、今後の研究の進展に期待したいところです。

Atmospheric Science Letters誌に掲載された論文はこちらです。
 ⇒ Latham, J., Parkes, B., Gadian, A. and Salter, S. (2012), Weakening of hurricanes via marine cloud brightening (MCB). Atmosph. Sci. Lett.. doi: 10.1002/asl.402
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