第三回多発性硬化症サマーカレッジの発表内容をClinical and Experimental Neuroimmunology特集号で無料公開中


Practical issues and new horizons in MS, NMOSD and related disorders
2016年8月6日-7日に神戸で開催された第3回MS サマーカレッジでの講演を中心にまとめたレビュー集、”Practical issues and new horizons in MS, NMOSD and related disorders”がClinical and Experimental Neuroimmunologyから出版されました。全ての論文にどなたでも無料でアクセス頂けますので、この機会に是非ご覧ください。

本サマーカレッジの学長を務められました、藤原一男先生(福島県立医科大学 多発性硬化症治療学講座 教授)から本特集号のご紹介頂きました。本文と併せてご一読ください。

  無料公開中  
Clinical and Experimental Neuroimmunology 第8巻s1号

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福島県立医科大学教授 藤原一男先生によるご紹介

 第3 回MS サマーカレッジは,2016 年8 月6 日(土)および7 日(日)に神戸ポートピアホテルにて開催されました。MS サマーカレッジは第1 回は福岡,第2 回は札幌で開催され,我が国のMS やNMO,その他の関連疾患に興味をもつ神経内科医や研究者が,一般の学会とは異なるリラックスした雰囲気の中で気軽に交流し議論し合える場を提供してきました。今回は,“Practical issues and new horizons in MS, NMOSD and related disorders”をメインテーマとして,昨年から埼玉医大の野村恭一先生,新潟大学の河内 泉先生と共に会の企画を練りプログラムを作成しました。そして当日は,国内外の招待演者を含めて約100 名の方々の参加があり,この領域の様々なトピックスについて熱心な議論が繰り広げられました。

 第1 日は,まずオープニングの講演としてMonika Bradl 先生(ウイーン医科大学)が,NMO の病態に関する実験的研究のこれまでの歩みを,先生ご自身の豊富なデータをもとに詳しく解説してくださいました。次に河内 泉先生(新潟大学)は,最近Annals of Neurology に掲載された前部視覚路の臨床,検査所見とミトコンドリア異常とアクアポリン4 の発現変化を含めた分子病態について興味深いデータを紹介されました。一方,Fu-Dong Shi 先生(天津医科大学)は,神経免疫学の知識を脳梗塞治療に応用するというユニークな研究をなさっており,フィンゴリモドやナタリズマブによる脳虚血の急性期治療の成績を提示していただきました。さらに一般演題の口演,ポスター発表に加えて,“症例クイズ”のセッションでは,参加者の皆さんをグループに分けワインを飲みながらリラックスした雰囲気の中で興味深い3 症例が提示され,その診断や治療方針などについて各グループの意見を出し合い会場は大いに盛り上がりました。

 第2 日は,新野正明先生(北海道医療センター)がMS の初期段階であるRadiologically Isolated Syndrome/Clinically Isolated Syndrome の定義,適切な経過追跡や治療開始のタイミングなどについてご講演いただきました。続いて越智博文先生(愛媛大学)が小児MS について診断基準,臨床的特徴,治療の実際などについて成人例との相違点を丁寧に解説してくださいました。さらに中島一郎先生(東北大学)はMS とNMO の境界線上にあるともいうべき症例を提示し,その診断上の課題や薬剤の選択などについて議論していただきました。会の締めくくりのセッションでは“再髄鞘化と機能回復”というタイトルで2 名の専門家にご講演いただきました。中原 仁先生(慶応大学)は,再髄鞘化が機能回復に重要であるがMS の病状進展とともに起こりにくくなること,再髄鞘化のキーになる分子とその調節,また再髄鞘化を画像化する取り組みについて最新のデータを紹介していただきました。田島文博先生(和歌山県立医科大学)は,リハビリテーション医学の専門家で,脊髄損傷における様々な病態生理学的な知見を解説し,またチーム医療による急性期からの積極的なリハビリテーションによる機能回復の実例について提示してくださいました。田島先生のご講演は,私たちのMS,NMO の患者さんたちのリハビリテーションのあり方にも大きな示唆を与えるものとなりました。

 このClinical and Experimental NeuroimmunologyのSupplement には,今回のMS サマーカレッジの上記講演のトピックスに関する総説と症例報告,そして全演題の抄録を掲載しております。MS,NMO の最新情報と会の熱気を多少なりとも感じ取っていただければ幸いです。

 なお会の初日である8 月6 日(土)は夜に神戸の花火大会があったため多くの人出があり,会場のポートピアホテル周辺は交通が大変混雑しました。しかし一部の参加者の方々は会の懇親会の後に三宮や元町に場所を移して深夜まで議論が続いたと聞いております。第3 回MS サマーカレッジに参加されたすべての方々に御礼を申し上げるとともに,来年の夏も今年以上に実り多い会になることを期待しております。

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カテゴリー: 免疫学, 神経医学, 神経科学   タグ:   この投稿のパーマリンク

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