前立腺がんのPSA検査廃止は転移患者を3倍に増やすおそれ|アメリカがん協会のCancer誌に報告

本年5月に米政府部会から「PSA(前立腺特異抗原)検査による前立腺がん検診は推奨しない」という報告書が提出され、PSA検査はほとんど、もしくは全く効果がないにもかかわらず実行され、本来なら不要ながん治療によって失禁やEDのように深刻な副作用を引き起こしていると結論付けられ波紋を呼びました。それに対し、アメリカがん協会のCancer誌で7月30日に発表された新しい分析結果からは、仮にPSA検査を廃止した場合、前立腺がんが他の臓器に転移するまで進行する男性が約三倍にも増える可能性があることが判りました。PSA検査による早期発見は、毎年約17,000人の男性患者を前立腺がんの進行から救っていると、同研究は推定しています。

University of Rochester, Medical CenterのEdward Messing氏は、もしPSA検査を行わなかった場合どのようなことが起きるか調査するために、米国の最大の癌登録情報、Surveillance, Epidemiology and End Results (SEER)のデータベースを用い、定期的なPSA検査が行われる前の1983-1985年の期間とPSA検査が一般的になった2006-2008年の期間を比較しました。分析の結果、2008年に発見された前立腺がんの症例のうち約8,000件は診断時点で既に転移が広がっていたことが判りました。次に、定期的なPSA検査を行っていなかった1980年代半ばの転移率を基に数式モデルを用いた結果、2008年にPSA検査を行わなかった場合、約25,000人の転移患者が予想され、実際の患者数の約3倍に増えることが予測されました。

「PSA検査の論争が起きている中、当発見は非常に重要である。PSA検査にはマイナス面もあり、また疾患の転帰には様々な要素が影響するが、今回発表したデータからはPSA検査をしないことで、進行した前立腺がん患者がより増えることが明らかになった。」とMessing氏は語りました。

プレスリリース原文(英語)
What Would Happen Without PSA Testing?

この研究成果を報告する論文は、アメリカがん協会Cancer誌で発表され、現在Early Viewとしてオンラインで先行公開されています。*Abstract(抄録)は無料公開。全文を読むにはアクセス権が必要です
Prostate-specific antigen screening for prostate cancer and the risk of overt metastatic disease at presentation
Emil Scosyrev, Guan Wu, Supriya Mohile, Edward M. Messing

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