人の目に頼らず、全自動で動物の睡眠覚醒状態を判定する「FASTER法」|理研などの共同研究グループが開発に成功、睡眠研究の大規模化が可能に

Genes to Cells心身の健康を保つうえで重要な役割を果たす睡眠は、医学・生命科学の分野で活発な研究対象となっています。しかし、睡眠研究のために動物実験を行う際には、対象となる動物の睡眠覚醒状態の判定が難しいことが大きな課題でした。動物がノンレム睡眠/レム睡眠/覚醒の3つの状態のうちどれにあるかは、脳波と筋電図の波形を基にして判定を行いますが、従来の方法では熟練した判定者による目視が欠かせないため、判定者の主観によるぶれが生じたり、判定に時間がかかるといった問題があり、研究の大規模化の障害となってきました。

このほど、理化学研究所などによる共同研究グループは、睡眠判定を全自動化するための問題点を1つ1つ解決することにより、脳波と筋電図のデータから睡眠覚醒状態の判定を全自動で高速に行うことのできる「FASTER(ファスター)法」の開発に成功しました。人為的に睡眠覚醒状態を引き起こしたマウスを使ってFASTER法の性能を確かめたところ、90%以上の正解率で判定できることが確認されました。また、従来の方法では判定に1~2時間かかっていたのに対し、FASTER法では10分程度に短縮することができました。

 理研プレスリリース 
報道発表資料/睡眠状態を全自動で判定できる「FASTER法」を開発(2013年4月25日)
60秒で分かるプレスリリース(2013年4月25日)

高い正解率で、高速かつ全自動で睡眠状態を判定できるFASTER法の登場によって、今後は動物実験による大規模な睡眠研究が可能となりそうです。また、今回はマウスの睡眠判定にFASTER法が使われましたが、同じ手法の応用によって人間の睡眠判定も可能になれば、睡眠研究の一層の発展が期待できます。

この成果を報告する論文は、日本分子生物学会の公式英文誌Genes to Cellsで4月29日に無料公開されました。
 ⇒ Sunagawa, G. A., Séi, H., Shimba, S., Urade, Y. and Ueda, H. R. (2013), FASTER: an unsupervised fully automated sleep staging method for mice. Genes to Cells. doi: 10.1111/gtc.12053

今回の研究を行ったのは、理研発生・再生科学総合研究センター(竹市雅俊センター長)システムバイオロジー研究プロジェクトの上田泰己プロジェクトリーダー、砂川玄志郎研究生(現:生命システム研究センター合成生物学グループ リサーチアソシエイト)と徳島大学大学院ヘルスバイオサイエンス研究部情報統合医学講座の勢井宏義教授、大阪バイオサイエンス研究所分子行動生物学部門の裏出良博部長、日本大学薬学部健康衛生学研究室の榛葉繁紀教授らの共同研究グループです。

No related posts.

カテゴリー: 一般, 睡眠   タグ:   この投稿のパーマリンク

コメントは受け付けていません。