<論文紹介> 水系溶媒中での向山アルドール反応|東京大・小林修教授らによる総説 (Advanced Synthesis & Catalysis・オープンアクセス)

Advanced Synthesis & Catalysis向山光昭博士らによって1973年に「向山アルドール反応」が初めて報告されてから40周年にあたる今年、さまざまな記念行事が開催されるとともに、同反応の発見後の研究の進展やその後の化学にもたらした影響を総括する総説がいくつも発表されています。(例えばリノイ大・デンマーク教授ら / 京都大・村上教授、金沢大・松尾准教授 / ケンブリッジ大・Ian Paterson教授ら

そうした中、水系溶媒中での向山アルドール反応に関して先駆的な成果を多数上げている東京大学大学院理学系研究科・小林 修教授らは、同分野の研究の展開をまとめた総説をAdvanced Synthesis & Catalysis誌に発表しました。

初期の向山アルドール反応は、化学量論量のルイス酸を使用し、有機溶媒中で完全な無水条件下で反応を進行させるものでした。有機溶媒の代わりに水を溶媒に用いることができれば、経済的で環境にやさしい反応が実現しますが、ルイス酸が水中で不安定であるなどの理由から、水を溶媒とする向山アルドール反応は不可能と考えられていました。

しかしその後、水を含む溶媒中での向山アルドール反応についての研究が進み、1991年には小林教授が、ランタノイドトリフラートが水中でも安定なルイス酸として機能することを発見しました。それを契機に研究が加速し、水系溶媒中での新しい触媒や反応の報告が相次いだ結果、向山アルドール反応の可能性は大きく広がってきています。この総説では、その過程で報告された多数の重要な成果をまとめています。

 関連書 

Modern Aldol ReactionsModern Aldol Reactions, 2 Volume Set
 Rainer Mahrwald (Editor), David A. Evans (Foreword by)
 ISBN: 978-3-527-30714-2
 July 2004 / 699 pages / US$590
 アルドール反応の著名な専門家がさまざまな側面を解説する、アルドール反応研究の集大成的な総説集。第2巻のChapter 5. Zirconium Alkoxides as Lewis Acidsを小林教授が共著されています。
 

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