神経科学誌EJNで論文査読プロセス透明化の試み、10か月間の成否は?ー 出版論文の査読コメントを実名入りで公開

Credit - PureSolution/Shutterstock

Credit – PureSolution/Shutterstock

The Federation of European Neuroscience Societies (FENS: ヨーロッパ神経学会連合) の公式誌 European Journal of Neuroscience (EJN) は、論文査読プロセスの透明化をめざして、投稿論文に対する査読者のコメントと著者の返信を、実名入りでオンライン公開することを2016年11月に決定しました。同年11月15日以降に投稿され、出版に至った論文が対象となります。開始から10か月が経過したこの試みの成否について、同誌の共同編集長を務める Paul Bolam・John Foxe両氏が報告しています。

査読を経験した人はご存知の通り、多くのジャーナルではシングル・ブラインド(査読者は著者が誰か分かるが、著者は査読者が誰か分からない)またはダブル・ブラインド(著者・査読者双方とも相手が誰か分からない)と呼ばれる形式で行われ、いずれの場合も、論文著者は査読が誰によってなされたのか知ることができません。また、査読者のコメントとそれに対する著者の返信は、非公開とされるのが一般的です。

査読者名を著者に知らせることに対しては、査読者が批判的なコメントを率直に書きにくくなるといった理由から否定的な意見が強く、普及していません。しかし一方で、査読プロセスの不透明さを問題視し、情報公開を進めるべきだという意見も近年高まっています。EJN誌はそのような背景を踏まえて、出版された論文だけに対象を限定したうえで、査読過程でのやり取りの公開に踏み切ったといえます。

上の記事で両編集長は、開始から10か月間、この試みが成功を収めてきたと評価しています。開始前には、査読の透明化に否定的な査読者から査読拒否にあうことを懸念していましたが、これまでに査読を依頼した3,293人のうち、それを理由に拒否したのは18人に留まっています。また、査読の質が低下するのではないかという懸念に対しても、実際にはそのようなことは起こっておらず、むしろ査読者の責任感を高め、査読コメントの質の向上につながっていると見ています。

読者の皆さんは、この試みについてどう感じますか? EJN誌で実際の例をご覧になりたい方は、例えばオープンアクセスで公開されている下記の論文をご参照下さい。

論文のタイトル・著者名等とともに、査読者名が明記されています。
ejn1

査読コメントとそれに対する著者の返信は、末尾のSupporting Informationに収録されています。
ejn2

カテゴリー: ジャーナル | コメントは受け付けていません。

大阪大学・生越 専介教授のAngewandte Author Profileを公開(10報目)

Angewandte Chemie International Edition (ACIE)では、“Angewandte Author Profiles”と題して、同誌で2000年以降に発表した論文が累計で10報・25報・50報・100報に達した著者のプロフィールとQ&A, “My 5 top papers”を紹介しています。

この度、同誌で過去10年間の発表論文が10報となった大阪大学大学院工学研究科応用化学専攻・生越 専介教授のAuthor Profileが公開されました。ぜひご覧下さい。

  •  Author Profile   Sensuke Ogoshi. (2017), Authors Profile. Angew. Chem. Int. Ed.. doi:10.1002/anie.201708270 (本文を読むにはアクセス権が必要です。以下同じ)

acie_backcover

カテゴリー: ジャーナル | タグ: | コメントは受け付けていません。

2017年8月のワイリー理工書ベストセラーはこちら!

日本で8月に最もよく売れたWiley(Wiley-Blackwell, Wiley-VCHを含む)の理工書トップ5をご紹介します。タイトルまたは表紙画像をクリックすると、目次やサンプル章(Read an Excerpt)など、詳しい内容をご覧いただけます。

Sequence Stratigraphy1位 Sequence Stratigraphy
 Edited by Dominic Emery, Keith Myers
 ISBN: 978-0-632-03706-3
 Paperback / 304 pages / August 1996

地層学の有力な手法として近年急速に重要性を増した「シーケンス層序学」に関する古典的教科書です。British Petroleum (BP) で使われた研修用教材を基に編纂されたもので、シーケンス層序学の基本的な概念とテクニック、応用法を解説します。

Advanced Analysis of Variance2位 Advanced Analysis of Variance
 Chihiro Hirotsu
 ISBN: 978-1-119-30333-6
 Hardcover / 416 pages / August 2017

世界的な統計学者として知られる広津 千尋教授(明星大学)が、実験データの解析に広く用いられる分散分析(ANOVA)を超える先進的な統計的手法としてadvanced analysis of variance (AANOVA) を提唱し、その手法を解説します。

From Prognostics and Health Systems Management to Predictive Maintenance 23位 From Prognostics and Health Systems Management to Predictive Maintenance 2: Knowledge, Reliability and Decision
 Brigitte Chebel-Morello, Jean-Marc Nicod, Christophe Varnier
 ISBN: 978-1-84821-938-0
 Hardcover / 170 pages / July 2017

工学分野で重要性を増す「故障予測・健全性管理 (PHM)」に関する諸問題を論じる2巻本の第2巻。この巻では、データのトレーサビリティ、情報と知識、適切な意思決定といった主題を取り上げます。

Principles of Object-Oriented Modeling and Simulation with Modelica 3.34位 Principles of Object-Oriented Modeling and Simulation with Modelica 3.3: A Cyber-Physical Approach, 2nd Edition
 Peter Fritzson
 ISBN: 978-1-118-85912-4
 paperback / 1256 pages / November 2014

物理モデリングのための言語 Modelica を用いたモデリングとシミュレーションについて詳細に解説します。100問以上の練習問題と解法が読者の学習を助けます。

Polymer Analysis5位 Polymer Analysis
 Barbara H. Stuart
 ISBN: 978-0-471-81363-7
 Paperback / 304 pages / January 2002

高分子の多様な分析法を習得するための好評教科書です。主要な分析テクニックを分かりやすく提示するとともに、それらを高分子研究に応用する方法を解説します。


ご注文は最寄りの書店・ネット書店で承ります。

カテゴリー: 書籍 | コメントは受け付けていません。

ベルリンで行われたAngewandte記念シンポジウムの録画配信を開始 / 4人のノーベル賞受賞者を含む世界的化学者らが講演

The Angewandte Festsymposium

先日当ブログでご紹介した、9月11日にベルリン自由大学で開催されたAngewandte記念シンポジウム(The Angewandte Festsymposium)の各講演の録画配信が開始されました。このシンポジウムは、ドイツ化学会 (Gesellschaft Deutscher Chemiker, GDCh)が今年2017年に創立150周年の記念イヤーを迎えたのに合わせて開催されたもので、ジャック・W・ショスタク、ロバート・グラブス、ウィリアム・モーナー、ベン・フェリンガという4人のノーベル賞受賞者に加えて、名古屋大学の伊丹健一郎教授を含む世界的な化学者が講演を行いました。

当日のライブ配信でご覧になった方もいらっしゃると思いますが、そうでない方も、下のリンク先ページからお申込みいただければすぐに視聴できます。

Register

カテゴリー: 展示会・イベント | タグ: | コメントは受け付けていません。

化学工学ジャーナル編集長による若手研究者向け論文出版ウェビナー(英語・9月14日 深夜25時~)

Wiley Author Webinar - Publishing Secrets for ECRs

Wileyは9月14日(木)深夜、化学工学ジャーナルの編集長2人を講師に迎えて、若手研究者が論文出版に成功するためのコツを教えるウェビナー(オンラインセミナー)を開催します。

タイトル Publishing Secrets for Early Career Researchers in Chemical Engineering (英語)
日時 日本時間 2017年9月14日(木)深夜25:00~
(9月15日(金)午前1:00~)
講師
  • Dr Michael P. Harold, MD Anderson Professor and Department Chair of Chemical and Biomolecular Engineering at the University of Houston. AIChE Journal 編集長
  • Dr João Soares, Professor in the Department of Chemical and Materials Engineering at the University of Alberta. The Canadian Journal of Chemical Engineering 編集長
視聴方法 事前申し込み制です。(無料) 上の画像をクリックして、リンク先ページから視聴をお申し込み下さい。
カテゴリー: 展示会・イベント | タグ: | コメントは受け付けていません。

Journal of Peptide Scienceから赤堀四郎博士記念特集号 / 最近の「赤堀コンファレンス」での報告を基に日独の最新成果を伝える

Journal of Peptide ScienceThe European Peptide Society(ヨーロッパペプチド学会)の公式誌である Journal of Peptide Science は、July-August 2017 号 (Volume 23, Issue 7-8)を故 赤堀 四郎博士 (1900-1992)の功績をたたえる記念特集号として発行しました。

赤堀博士は、戦前・戦後を通じて日本を代表する生化学者として多くの業績を残すとともに、大阪大学に蛋白質研究所を創設し初代所長を務めるなど、日本のペプチドおよび蛋白質科学の発展に大きな役割を果たしました。また1985年からは、日独のペプチド科学者の交流の場として、博士の名前を冠するセミナー「赤堀コンファレンス (Akabori Conference)」が隔年開催されています。

今回の特集号は、第15回(2014年)・第16回(2016年)の赤堀コンファレンスでの発表者から寄稿された総説5報と原著論文19報を掲載するもので、日独両国のペプチド・蛋白質科学の最先端の成果を伝える内容となっています。 (追記: 2017年9月30日までの期間限定で無料公開) icon_free

カテゴリー: ジャーナル | コメントは受け付けていません。

高コントラストSEMイメージング (Thermo Fisher Scientific)

Flower_GSED_8kV_spot 4_LI_600x399
この画像は、シリコン基板上にあるGaAsナノワイヤーの走査型電子顕微鏡写真を示しています。この自己触媒型GaAsワイヤーはガリウム液滴から成長したもので、ワイヤーの先端にその液滴を確認できます。

この試料およびその他の多くの試料に対して、SEMは、ナノ材料のトポグラフィーを解明する確実な技術で、さまざまな成分間の鮮明なコントラストを示すことができます。ただし、対象の材料が絶縁体である場合や、電子ビームに敏感な場合、組成が似ている場合は、材料コントラストの取得が厄介になることがあります。このような事例で、TVレートスキャンを使用するとき、低ノイズでワーキングディスタンスが短いとき、傾斜角を用いるときなどは、鮮明なコントラストをすばやく得ることがなかなかできません。

材料コントラストイメージングに関するこうした問題をまとめて解決するために、先頃 Thermo Fisher Scientific から、独自のインレンズ反射電子検出器(T1)を備えたまったく新しいApreo SEMが発売されました。ApreoのT1検出器は、ビームがオンになるとすぐに反射電子信号を捉えます。この検出器はカラムの先端に配置されているため、ナビゲーションからごく細部の撮像まで常に強烈な材料コントラストを得ることができます。わずか数pAのビーム電流にも感応するため、それ以上のビーム電流では破損する可能性のある繊細な試料の撮像に最適です。

Apreoに最新の静電界-磁界複合型ファイナルレンズを使えば、材料のコントラストが一層際立ちます。この画像では、平均原子量が極めて近似の2つの材料(GaとGaAs)間のコントラストを強めるために複合型レンズフィルタ機能を使用しています。また複合型レンズフィルタは帯電シグナルが除外されるため、極低ビームエネルギーと低電流性能でも不可能な絶縁体の観察に帯電することのない撮像が可能になります。

顕微鏡の汎用性、効率性、操作性を高める多様な機能を備えたApreoの優れた検出機能により、研究者は科学的発見の進歩に欠かせないコントラストを得ることができます。

謝辞:
試料提供: マドリードマイクロエレクトロニクス研究所(CNM-CSIC)「MBE: オプトエレクトロニクスの量子ナノ構造」研究班のDavid Fuster、Andrés Raya、Álvaro San Paulo、María Ujue Gonzálezの各氏

(情報提供: Thermo Fisher Scientific

カテゴリー: 一般 | コメントは受け付けていません。

9月11日(月)ベルリンで世界的化学者らを講師に迎えてAngewandte記念シンポジウムを開催 / ライブ中継の無料視聴を申込受付中

The Angewandte Festsymposium

Angewandte Chemie International Editionドイツ化学会 (Gesellschaft Deutscher Chemiker, GDCh)は、今年2017年に創立150周年の記念イヤーを迎えました。それに合わせてさまざまな記念行事が企画され、その一環として同学会の公式誌であるAngewandte Chemie International Editionも、著名な化学者による総説や化学史エッセイなどを集めたGDCH 150周年記念特集号 (Jubilee Issue 150 Years of the GDCh)を発行したばかりです。(無料公開中)

さらに9月11日には、ベルリン自由大学を会場として、Angewandte記念シンポジウム(The Angewandte Festsymposium)が開催されます。講師にはジャック・W・ショスタク、ロバート・グラブス、ウィリアム・モーナー、ベン・フェリンガという4人のノーベル賞受賞者が含まれ、他にも世界的な化学者がずらりと名前を連ねています。日本からは、名古屋大学の伊丹健一郎教授が登壇します。

全体で10時間に及ぶこの超豪華なシンポジウムは、ストリーミングでライブ配信されるので、日本からでもウェブで各講演を楽しめます。下のバナーをクリックして、リンク先ページから視聴をお申込み下さい。(無料) 講師陣とプログラムもご覧いただけます。

Register

  • 日時: 2018年9月11日(月) 15時30分 ~ 深夜 25時30分 (日本時間)

カテゴリー: 展示会・イベント | タグ: | コメントは受け付けていません。

<論文紹介> 食用油と硫黄から生まれる安価な水銀吸着ポリマー / 開発途上国の金採鉱から排出される水銀の除去に期待

Credit - Mark Evans/iStockphoto

Credit – Mark Evans/iStockphoto

金価格が近年上昇していることから、開発途上国でASGM (Artificial Small-scale and Gold Mining)と呼ばれる小規模な金採掘が広まっています。しかしそういったASGMの現場では、金鉱石から金を取り出すための手軽な精製法に用いられる水銀が問題になっています。使い終わった水銀の多くはそのまま環境中に排出され、環境汚染につながるのに加えて、多くの子どもを含む採鉱従事者の間に健康被害を引き起こしています。そのような地域に向けて、低コストで水銀の除去を可能にするための方策の確立は急務となっています。

フリンダース大学(オーストラリア)のJustin Chalker講師らのグループは、使用済みの食用油(キャノーラ油)と硫黄を原料として簡単な方法で合成できる多孔性のポリマーが、金属水銀単体の液体・蒸気に加えて、無機水銀および特に毒性の高い有機水銀を効率的に吸着することを明らかにしました。使用済みの食用油は外食産業から、また硫黄は石油精製の副産物としてそれぞれ大量に発生するため、リサイクルによって水銀除去に活用できるなら、環境のために一石二鳥といえます。

この成果を報告する論文は、Chemistry – A European Journal誌に掲載されるとともに、同誌の注目論文 Hot Paper に選ばれました。

Chemistry - A European Journal

  •  論文  Worthington, M. J. H., Kucera, R. L., Albuquerque, I. S., Gibson, C. T., Sibley, A., Slattery, A. D., Campbell, J. A., Alboaiji, S. F. K., Muller, K. A., Young, J., Adamson, N., Gascooke, J. R., Jampaiah, D., Sabri, Y. M., Bhargava, S. K., Ippolito, S. J., Lewis, D. A., Quinton, J. S., Ellis, A. V., Johs, A., Bernardes, G. J. L. and Chalker, J. M. (2017), Laying Waste to Mercury: Inexpensive Sorbents Made from Sulfur and Recycled Cooking Oils. Chem. Eur. J.. doi:10.1002/chem.201702871 (本文を読むにはアクセス権が必要です)
  •  フリンダース大学の発表資料  Cooking up new ways to clean up our planet (August 8,
    2017)
カテゴリー: 論文 | コメントは受け付けていません。

2017年7月のワイリー理工書ベストセラーはこちら!

日本で7月に最もよく売れたWiley(Wiley-Blackwell, Wiley-VCHを含む)の理工書トップ5をご紹介します。タイトルまたは表紙画像をクリックすると、目次やサンプル章(Read an Excerpt)など、詳しい内容をご覧いただけます。

1位 Physics of Semiconductor Devices, 3rd Edition
 Simon M. Sze, Kwok K. Ng
 ISBN: 978-0-471-14323-9
 Hardcover / 832 pages / October 2006

半導体デバイスに関する古典的教科書です。

2位 Physics for Radiation Protection, 3rd Edition
 James E. Martin
 ISBN: 978-3-527-41176-4
 Hardcover / 670 pages / March 2013

放射線防護従事者をめざす学生への豊富な教育経験から生まれた本書は、研究者や実務家が放射線防護の物理学的基礎を正確に理解し、必要に応じてデータを参照できるよう配慮されています。物理学の初歩的な知識しかもたない読者でも理解できるよう書かれ、核図表の読み方に始まり、放射線防護に関する主要な概念、放射線量などの計算法を丁寧に解説します。主な放射性核種の壊変図式などデータ・図表も豊富に収録し、また福島第一原発を含む過去の原発事故例についても記述しています。

Fault Zone Dynamic Processes: Evolution of Fault Properties During Seismic Rupture3位 Fault Zone Dynamic Processes: Evolution of Fault Properties During Seismic Rupture
 Edited by Marion Y. Thomas, Thomas M. Mitchell, Harsha S. Bhat
 ISBN: 978-1-119-15688-8
 Hardcover / 306 pages / June 2017

地震を引き起こす、断層帯における破壊過程に関する最新知識を、学際的見地から総合的・体系的に解説します。

Spatial and Spatio-temporal Bayesian Models with R - INLA4位 Spatial and Spatio-temporal Bayesian Models with R – INLA
 Marta Blangiardo, Michela Cameletti
 ISBN: 978-1-118-32655-8
 Hardcover / 320 pages / April 2015

空間統計学とベイズ的手法を統合し、実用的かつ革新的な方法で読者に提示する一冊です。疫学・生物統計学・社会科学から数多くの実例を採り、R言語パッケージR-INLAで記述しています。

Causal Inference in Statistics: A Primer5位 Causal Inference in Statistics: A Primer
 Judea Pearl, Madelyn Glymour, Nicholas P. Jewell
 ISBN: 978-1-119-18684-7
 Paperback / 160 pages / March 2016

データ解釈において重要な「因果推論」の概念を平易な表現と事例によって解説し、政策・医療・教育などの領域への応用法を教える新しい入門書。著者ジューディア・パールは、構造モデルに基づく因果的・反事実的推論の理論を発展させるなどの業績で知られ、2011年のACMチューリング賞を受賞した当分野の世界的権威です。


ご注文は最寄りの書店・ネット書店で承ります。

カテゴリー: 書籍 | タグ: | コメントは受け付けていません。