牛の幹細胞からの組織培養で作った、作成費用3千万円超の「人造肉ハンバーガー」の試食会が行われる - Wileyの食品科学ジャーナル編集長がコメント

ハンバーガーオランダ・マーストリヒト大学の研究室は、牛の幹細胞を培養して作った筋繊維を成形して「人造肉」を開発、それを調理した「人造肉ハンバーガー」の試食会が昨日5日にロンドンで行われました。SFを思わせるような発想と、作成費用が21万7,000ポンド(3,284万円)という金額のインパクトが相まって、大きな話題を呼んでいます。

牛肉1kgの生産には穀物11kgと大量の水が必要とされると言われるなど、畜産による食肉生産には多量の資源・エネルギーの投入が必要で、温室効果ガス排出増の一因ともなっています。上記のBBCの記事によると、今回のように実験室で作る「人造肉」は、畜産による通常の肉と比べて生産に要するエネルギー消費を55%、温室効果ガス排出を96%それぞれ削減できるそうです。また、こういった人造肉開発のための研究は、家畜からの食肉生産に反対する動物愛護団体からも一定の支持を得ているようです。

このような形での人造肉生産技術に果たして将来性があるのかどうかが気になりますが、それについてWileyの食品科学・工学専門誌International Journal of Food Science & Technologyの編集長を務めるC. J. Smith教授がコメントを発表しています。

 ⇒ Expert Reaction to the ‘Lab Burger’ (August 5, 2013 BBC.CO.UK)

Smith教授は、こういった形での人造肉生産は技術的には興味深く、ニュースの種になるだろうがそれ以上のものではないとして、実用化の可能性に否定的です。同教授は、幹細胞からの組織培養技術は医学的には重要性が高いが、多くのコストがかかるため、食肉生産を目的として商業ベースに乗せるのは無理だろうとする一方、藻類やキノコを原料にして肉の代用品を開発するほうが近道と見ています。また、同誌の次期編集長Charles Brennan教授は、技術的には前進と言えるかもしれないが、むしろ食肉の生産・流通プロセスから無駄をなくすことのほうが重要と考えているようです。

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