<記事紹介> 大学による新薬開発への取り組み - その課題は?(Angew. Chem. Int. Ed.)

昨今の厳しい経営環境の中、これまで新薬開発の主役を務めてきた製薬企業が巨額の投資を維持することが困難になり、研究開発の規模を縮小する動きが見られるようになっています。その穴を埋めるために、大学が新薬開発において役割を拡大することが期待され、米国ではNIHのような研究助成団体もその動きを後押ししています。開発に成功すれば、大学はライセンス収入を得られますが、その前に越えなくてはならないハードルがいくつもあるようです。創薬のための計算化学の研究で名高いイェール大学のウィリアム・ヨーゲンセン(William L. Jorgensen)教授が、Angewandte Chemie International Editionに寄稿したエッセイで解説しています。

 ⇒ Jorgensen, W. L. (2012), Challenges for Academic Drug Discovery. Angew. Chem. Int. Ed.. doi: 10.1002/anie.201204625 (本文を読むにはアクセス権が必要です)

ヨーゲンセン教授は、大学が新薬開発に取り組むにあたって直面する課題として、ハイスループットスクリーニング(HTS)のための化合物ライブラリーが製薬企業に比べて貧弱であること、リード最適化に携わるスタッフの経験・マンパワーの不足、候補化合物が見つかっても前臨床試験を行うための費用を負担できず、製薬企業にライセンス供与する以前の段階で頓挫してしまうことなどを挙げています。

対策として、例えば資金面では、初期投資に加えて過去のライセンスからの収入の一部をプールして前臨床試験に使えるようにする一方、収入の一部を貢献した研究グループに還元する仕組みを整備することなどを提言しています。

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