<論文紹介> 世界一小さいナノサイズの磁気撹拌子|シンガポールの研究グループが開発に成功、微小量の液体を効果的に撹拌 (ACIE VIP)

Angewandte Chemie International Edition極小スケールで実験を行うラボ・オン・チップのように、きわめて微小な量の液体を実験で扱う機会が増えています。液体を撹拌する場合、通常のスケールでの実験であれば、撹拌子と呼ばれるチップを液中に入れて磁力で回転させる磁気攪拌機(マグネチックスターラー)がよく使われます。微小量の液体に使えるようなマイクロ/ナノサイズの撹拌子の開発もこれまでに試みられてきましたが、液中での遊動性に難があるなど課題が残っていました。

このほどシンガポール・南洋理工大学の研究グループは、直径75nm~1.4μm・長さが最大17μmの範囲で調整可能というナノサイズの棒状の撹拌子を開発し、Angewandte Chemie International Editionで報告しました。

 ⇒ Chong, W. H., Chin, L. K., Tan, R. L. S., Wang, H., Liu, A. Q. and Chen, H. (2013), Stirring in Suspension: Nanometer-Sized Magnetic Stir Bars . Angew. Chem. Int. Ed.. doi: 10.1002/anie.201303249 (本文を読むにはアクセス権が必要です)

この撹拌子は、直径40nmの酸化鉄(Fe3O4)ナノ粒子でチェーンを形成し、その周りをシリカで覆ったもので、容易かつ安価に大量製造が可能です。肉眼で見えないほど小さいこの撹拌子ですが、液中でうまく浮遊して、通常の磁気攪拌機を使って全体を効果的に撹拌できることが確認されました。使用後は、磁石を使って容易に回収可能とのことです。

★ この論文は、二人の査読者によって特に重要性を認められた論文 VIP (Very Important Paper) に選ばれました。

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