<論文紹介> 裁断化したポリ乳酸ナノシートのパッチワーク吸着|創傷被覆材として、やけど治療用に応用可能か(早大・武岡教授、東海大・岡村特任講師ら)

熱傷(やけど)の治療においては、患部を適切に保護して感染症を防止することが非常に重要です。感染症が悪化した場合、症状が全身に及ぶ敗血症となり、命を落とすこともありえます。熱傷の患部を細菌感染から保護するさまざまな創傷被覆材が開発されていますが、いずれも比較的平坦な患部への使用を想定したもので、指先のように複雑な表面の部位に使える被覆材の実現が課題となっています。

東海大学創造科学技術研究機構・岡村陽介特任講師、早稲田大学先進理工学部・武岡真司教授らの研究グループは、ポリ(L)乳酸から合成したナノシートを細かく断片化して水中に分散させたナノシート懸濁液を、さまざまな表面上で乾燥させました。すると、乾燥後に残ったナノシートの断片がパッチワークを構成して吸着し、接着剤を使うことなく複雑な形状の表面を保護できることが確認されました。また、マウスと緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa)を使った実験では、パッチワーク化したナノシートは熱傷の患部を細菌感染から守る効果があり、その効果は少なくとも3日間持続することが確かめられました。

被覆材を毎日交換しなくてすめば、患者の負担を軽減することができます。今回の発見が、部位を問わず患部を感染症から保護できる新しい被覆材の開発につながることが大いに期待されます。

この成果は、Advanced Materials誌で論文として発表されました。
 ⇒ Okamura, Y., Kabata, K., Kinoshita, M., Miyazaki, H., Saito, A., Fujie, T., Ohtsubo, S., Saitoh, D. and Takeoka, S. (2012), Fragmentation of Poly(lactic acid) Nanosheets and Patchwork Treatment for Burn Wounds. Adv. Mater.. doi: 10.1002/adma.201202851
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また、化学ニュースサイトChemistry Viewsがこの成果に関する紹介記事を掲載しています。
■ Chemistry Views - Patchwork Nanosheets Help Burns Patients

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