日本の生体肝移植後10年の生存率は極めて優秀

日本で急性肝不全のため生体肝移植を受けた患者の10年後の生存率は極めて高く、73%に達することが東京大学臓器移植医療部の山敷宣代助教授らにより米国肝臓学会誌Liver Transplantation 9月号で発表されました。生体肝移植患者の長期的な生存に肝臓疾患の種類や治療方法は影響しないことが判りましたが、臓器提供者及び患者の年齢は長期的な患者の状態に影響があると報告しています。

当報告は、日本の難治性の肝・胆道疾患に関する調査研究班によるデータから、急性肝不全のために生体肝移植を受けた209の患者の症例を抽出し、手術から1年後の生存率は79%、5年後の生存率は74%、10年後の生存率は73%であることを特定しました。山岸助教授は「死後の臓器提供者が少ない日本において、生体肝移植の効果がこの研究で明らかになった。全ての急性肝不全患者における生体肝移植の総合的な影響を確定するためには、引き続き調査する必要がある」と語りました。

アジア(中国を除く)では肝移植全体の中で、生体肝移植が90%を占めるのに対し、アメリカ・ヨーロッパでは5%しか占めておらず、ほとんどを死後の臓器提供に頼っています。Liver Transplantation誌同9月号に掲載されている、香港大学及びQueen Mary病院のChung-Mau Lo氏による論説では、急性肝不全患者への生体肝移植は、専門家の間で以下のような論議を呼んできた旨を取り上げています。
・西洋諸国では緊急時における生体肝移植の結果は芳しくない
・死後の臓器提供のためのプログラムが発達している国では、生体肝移植に頼らなくても急性肝不全患者が移植を受けられる可能性が高い
・臓器提供者への強制や、緊急時に評価プロセスを急がされることによる臓器提供者のリスク増大への懸念がある

Lo氏は「死後の臓器移植は臓器を入手できるかによって左右され、リスクの高い移植片が頻繁に利用される。その点、生体肝移植は臓器待ちによる死亡を避けることができ、患者の初期症状の段階でよりよいタイミングで手術を行うことが可能になる。アジアでは他に選択肢がなかったため生体肝移植が発展したが、結果的によい選択であったと言えるのかもしれない。」と締めくくった。

プレスリリース原文(英語)
Survival “Excellent” Following Living Donor Liver Transplantation for Acute Liver Failure

この研究を報告する論文は、米国肝臓学会及び国際肝臓移植学会のLiver Transplantation誌で発表されています。
⇒Original Article(英語)
Outcomes after living donor liver transplantation for acute liver failure in Japan: Results of a nationwide survey
Noriyo Yamashiki, Yasuhiko Sugawara, Sumihito Tamura, et al.
*Abstract(抄録)は無料公開。全文を読むにはアクセス権が必要です

⇒Editorial(英語)
Living Donor Liver Transplantation for Acute Liver Failure: No Other Choice
Chung-Mau Lo
*Abstract(抄録)の提供はありません。全文を読むにはアクセス権が必要です

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