災害時の糖尿病診療 ~東日本大震災の教訓より~

Journal of Diabetes Investigation coverアジア糖尿病学会(AASD – アジア17ヵ国20団体が参加) の英文機関誌 Journal of Diabetes Investigation から、東日本大震災を教訓とした災害時の糖尿病診療に関するレポートが出版されました。筆頭著者である、国立国際医療研究センターの岸本美也子先生により下記ご紹介いただきましたので、是非全文と供にご一読ください。

当レポートはEarly Viewとしてオンライン版で先行公開されており、全文に無料でアクセス頂けます
Diabetes care: After the Great East Japan Earthquake
Miyako Kishimoto and Mitsuhiko Noda

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国立国際医療研究センター 岸本美也子先生によるご紹介

2011年3月11日に発生した東日本大震災と津波は、東北地方の広範囲にわたって甚大な被害を及ぼした。国立国際医療研究センターは地震発生直後から被災地の避難所巡回診療等の医療支援を行ったが、本レポートではその実体験に基づいて、災害時の糖尿病診療における問題点を列挙し、今後の課題として報告した。

具体的には
(1)災害発生直後からインスリン等の医薬品供給に全力が注がれ、各種のアナウンスがなされたが、現場では必要な情報の伝達や入手が困難であった。今後は必要な医療関係の情報が速やかに伝達されるようなシステムの構築が必須と思われた。

(2)避難所での劣悪な環境の中で、多くの糖尿病患者の血糖コントロールは悪化していた。高カロリーの配給食により著明な食後高血糖が認められたケースもあったが、支援物資の供給が不安定であるという現状と、精神的な要因により今後摂食量が減る可能性を考えると、低血糖予防のため血糖を高めにコントロールせざる得ない現実があった。

(3)血糖コントロールは精神的ストレスによっても悪化するが、避難所での生活はストレスが多く、加えて大切な家族や友人を失った人々は深い悲しみとsurvivor’s guiltに苛まれていた。被災地の糖尿病患者のメンタルケアは今後も継続して対応すべき重要な課題である。

(4)被災地の医療支援を行った医療従事者は、当然のことながら、糖尿病を専門とするものばかりではない。今後は糖尿病を専門としない医療者でも現場で適切な処方が可能となるような災害時の診療マニュアル等の作成が必要と考える。

(5)避難所では多くの糖尿病患者が震災発生前の内服薬やインスリンおよび「お薬手帳」等の処方内容記録を紛失しており、その治療内容の記憶も不確かであった。糖尿病患者においては日頃、自分の治療内容を把握し、必要な持ち出し品の準備と知識が必要であることを十分に教育することが重要である。また、避難所生活時および仮設住宅等に移ってからの食事についても適切な指導が必要である。これら災害時の注意点については、今後も糖尿病教室などを利用し、積極的に患者教育を行っていく必要があると考えられた。

最後に、本レポートが今後の災害時糖尿病診療の一助となれば幸いである。

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カテゴリー: 生活習慣病, 糖尿病・内分泌・代謝   タグ:   この投稿のパーマリンク

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