2017年8月のワイリー理工書ベストセラーはこちら!

日本で8月に最もよく売れたWiley(Wiley-Blackwell, Wiley-VCHを含む)の理工書トップ5をご紹介します。タイトルまたは表紙画像をクリックすると、目次やサンプル章(Read an Excerpt)など、詳しい内容をご覧いただけます。

Sequence Stratigraphy1位 Sequence Stratigraphy
 Edited by Dominic Emery, Keith Myers
 ISBN: 978-0-632-03706-3
 Paperback / 304 pages / August 1996

地層学の有力な手法として近年急速に重要性を増した「シーケンス層序学」に関する古典的教科書です。British Petroleum (BP) で使われた研修用教材を基に編纂されたもので、シーケンス層序学の基本的な概念とテクニック、応用法を解説します。

Advanced Analysis of Variance2位 Advanced Analysis of Variance
 Chihiro Hirotsu
 ISBN: 978-1-119-30333-6
 Hardcover / 416 pages / August 2017

世界的な統計学者として知られる広津 千尋教授(明星大学)が、実験データの解析に広く用いられる分散分析(ANOVA)を超える先進的な統計的手法としてadvanced analysis of variance (AANOVA) を提唱し、その手法を解説します。

From Prognostics and Health Systems Management to Predictive Maintenance 23位 From Prognostics and Health Systems Management to Predictive Maintenance 2: Knowledge, Reliability and Decision
 Brigitte Chebel-Morello, Jean-Marc Nicod, Christophe Varnier
 ISBN: 978-1-84821-938-0
 Hardcover / 170 pages / July 2017

工学分野で重要性を増す「故障予測・健全性管理 (PHM)」に関する諸問題を論じる2巻本の第2巻。この巻では、データのトレーサビリティ、情報と知識、適切な意思決定といった主題を取り上げます。

Principles of Object-Oriented Modeling and Simulation with Modelica 3.34位 Principles of Object-Oriented Modeling and Simulation with Modelica 3.3: A Cyber-Physical Approach, 2nd Edition
 Peter Fritzson
 ISBN: 978-1-118-85912-4
 paperback / 1256 pages / November 2014

物理モデリングのための言語 Modelica を用いたモデリングとシミュレーションについて詳細に解説します。100問以上の練習問題と解法が読者の学習を助けます。

Polymer Analysis5位 Polymer Analysis
 Barbara H. Stuart
 ISBN: 978-0-471-81363-7
 Paperback / 304 pages / January 2002

高分子の多様な分析法を習得するための好評教科書です。主要な分析テクニックを分かりやすく提示するとともに、それらを高分子研究に応用する方法を解説します。


ご注文は最寄りの書店・ネット書店で承ります。

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ベルリンで行われたAngewandte記念シンポジウムの録画配信を開始 / 4人のノーベル賞受賞者を含む世界的化学者らが講演

The Angewandte Festsymposium

先日当ブログでご紹介した、9月11日にベルリン自由大学で開催されたAngewandte記念シンポジウム(The Angewandte Festsymposium)の各講演の録画配信が開始されました。このシンポジウムは、ドイツ化学会 (Gesellschaft Deutscher Chemiker, GDCh)が今年2017年に創立150周年の記念イヤーを迎えたのに合わせて開催されたもので、ジャック・W・ショスタク、ロバート・グラブス、ウィリアム・モーナー、ベン・フェリンガという4人のノーベル賞受賞者に加えて、名古屋大学の伊丹健一郎教授を含む世界的な化学者が講演を行いました。

当日のライブ配信でご覧になった方もいらっしゃると思いますが、そうでない方も、下のリンク先ページからお申込みいただければすぐに視聴できます。

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化学工学ジャーナル編集長による若手研究者向け論文出版ウェビナー(英語・9月14日 深夜25時~)

Wiley Author Webinar - Publishing Secrets for ECRs

Wileyは9月14日(木)深夜、化学工学ジャーナルの編集長2人を講師に迎えて、若手研究者が論文出版に成功するためのコツを教えるウェビナー(オンラインセミナー)を開催します。

タイトル Publishing Secrets for Early Career Researchers in Chemical Engineering (英語)
日時 日本時間 2017年9月14日(木)深夜25:00~
(9月15日(金)午前1:00~)
講師
  • Dr Michael P. Harold, MD Anderson Professor and Department Chair of Chemical and Biomolecular Engineering at the University of Houston. AIChE Journal 編集長
  • Dr João Soares, Professor in the Department of Chemical and Materials Engineering at the University of Alberta. The Canadian Journal of Chemical Engineering 編集長
視聴方法 事前申し込み制です。(無料) 上の画像をクリックして、リンク先ページから視聴をお申し込み下さい。
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Journal of Peptide Scienceから赤堀四郎博士記念特集号 / 最近の「赤堀コンファレンス」での報告を基に日独の最新成果を伝える

Journal of Peptide ScienceThe European Peptide Society(ヨーロッパペプチド学会)の公式誌である Journal of Peptide Science は、July-August 2017 号 (Volume 23, Issue 7-8)を故 赤堀 四郎博士 (1900-1992)の功績をたたえる記念特集号として発行しました。

赤堀博士は、戦前・戦後を通じて日本を代表する生化学者として多くの業績を残すとともに、大阪大学に蛋白質研究所を創設し初代所長を務めるなど、日本のペプチドおよび蛋白質科学の発展に大きな役割を果たしました。また1985年からは、日独のペプチド科学者の交流の場として、博士の名前を冠するセミナー「赤堀コンファレンス (Akabori Conference)」が隔年開催されています。

今回の特集号は、第15回(2014年)・第16回(2016年)の赤堀コンファレンスでの発表者から寄稿された総説5報と原著論文19報を掲載するもので、日独両国のペプチド・蛋白質科学の最先端の成果を伝える内容となっています。 (追記: 2017年9月30日までの期間限定で無料公開) icon_free

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高コントラストSEMイメージング (Thermo Fisher Scientific)

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この画像は、シリコン基板上にあるGaAsナノワイヤーの走査型電子顕微鏡写真を示しています。この自己触媒型GaAsワイヤーはガリウム液滴から成長したもので、ワイヤーの先端にその液滴を確認できます。

この試料およびその他の多くの試料に対して、SEMは、ナノ材料のトポグラフィーを解明する確実な技術で、さまざまな成分間の鮮明なコントラストを示すことができます。ただし、対象の材料が絶縁体である場合や、電子ビームに敏感な場合、組成が似ている場合は、材料コントラストの取得が厄介になることがあります。このような事例で、TVレートスキャンを使用するとき、低ノイズでワーキングディスタンスが短いとき、傾斜角を用いるときなどは、鮮明なコントラストをすばやく得ることがなかなかできません。

材料コントラストイメージングに関するこうした問題をまとめて解決するために、先頃 Thermo Fisher Scientific から、独自のインレンズ反射電子検出器(T1)を備えたまったく新しいApreo SEMが発売されました。ApreoのT1検出器は、ビームがオンになるとすぐに反射電子信号を捉えます。この検出器はカラムの先端に配置されているため、ナビゲーションからごく細部の撮像まで常に強烈な材料コントラストを得ることができます。わずか数pAのビーム電流にも感応するため、それ以上のビーム電流では破損する可能性のある繊細な試料の撮像に最適です。

Apreoに最新の静電界-磁界複合型ファイナルレンズを使えば、材料のコントラストが一層際立ちます。この画像では、平均原子量が極めて近似の2つの材料(GaとGaAs)間のコントラストを強めるために複合型レンズフィルタ機能を使用しています。また複合型レンズフィルタは帯電シグナルが除外されるため、極低ビームエネルギーと低電流性能でも不可能な絶縁体の観察に帯電することのない撮像が可能になります。

顕微鏡の汎用性、効率性、操作性を高める多様な機能を備えたApreoの優れた検出機能により、研究者は科学的発見の進歩に欠かせないコントラストを得ることができます。

謝辞:
試料提供: マドリードマイクロエレクトロニクス研究所(CNM-CSIC)「MBE: オプトエレクトロニクスの量子ナノ構造」研究班のDavid Fuster、Andrés Raya、Álvaro San Paulo、María Ujue Gonzálezの各氏

(情報提供: Thermo Fisher Scientific

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9月11日(月)ベルリンで世界的化学者らを講師に迎えてAngewandte記念シンポジウムを開催 / ライブ中継の無料視聴を申込受付中

The Angewandte Festsymposium

Angewandte Chemie International Editionドイツ化学会 (Gesellschaft Deutscher Chemiker, GDCh)は、今年2017年に創立150周年の記念イヤーを迎えました。それに合わせてさまざまな記念行事が企画され、その一環として同学会の公式誌であるAngewandte Chemie International Editionも、著名な化学者による総説や化学史エッセイなどを集めたGDCH 150周年記念特集号 (Jubilee Issue 150 Years of the GDCh)を発行したばかりです。(無料公開中)

さらに9月11日には、ベルリン自由大学を会場として、Angewandte記念シンポジウム(The Angewandte Festsymposium)が開催されます。講師にはジャック・W・ショスタク、ロバート・グラブス、ウィリアム・モーナー、ベン・フェリンガという4人のノーベル賞受賞者が含まれ、他にも世界的な化学者がずらりと名前を連ねています。日本からは、名古屋大学の伊丹健一郎教授が登壇します。

全体で10時間に及ぶこの超豪華なシンポジウムは、ストリーミングでライブ配信されるので、日本からでもウェブで各講演を楽しめます。下のバナーをクリックして、リンク先ページから視聴をお申込み下さい。(無料) 講師陣とプログラムもご覧いただけます。

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  • 日時: 2018年9月11日(月) 15時30分 ~ 深夜 25時30分 (日本時間)

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<論文紹介> 食用油と硫黄から生まれる安価な水銀吸着ポリマー / 開発途上国の金採鉱から排出される水銀の除去に期待

Credit - Mark Evans/iStockphoto

Credit - Mark Evans/iStockphoto

金価格が近年上昇していることから、開発途上国でASGM (Artificial Small-scale and Gold Mining)と呼ばれる小規模な金採掘が広まっています。しかしそういったASGMの現場では、金鉱石から金を取り出すための手軽な精製法に用いられる水銀が問題になっています。使い終わった水銀の多くはそのまま環境中に排出され、環境汚染につながるのに加えて、多くの子どもを含む採鉱従事者の間に健康被害を引き起こしています。そのような地域に向けて、低コストで水銀の除去を可能にするための方策の確立は急務となっています。

フリンダース大学(オーストラリア)のJustin Chalker講師らのグループは、使用済みの食用油(キャノーラ油)と硫黄を原料として簡単な方法で合成できる多孔性のポリマーが、金属水銀単体の液体・蒸気に加えて、無機水銀および特に毒性の高い有機水銀を効率的に吸着することを明らかにしました。使用済みの食用油は外食産業から、また硫黄は石油精製の副産物としてそれぞれ大量に発生するため、リサイクルによって水銀除去に活用できるなら、環境のために一石二鳥といえます。

この成果を報告する論文は、Chemistry - A European Journal誌に掲載されるとともに、同誌の注目論文 Hot Paper に選ばれました。

Chemistry - A European Journal

  •  論文  Worthington, M. J. H., Kucera, R. L., Albuquerque, I. S., Gibson, C. T., Sibley, A., Slattery, A. D., Campbell, J. A., Alboaiji, S. F. K., Muller, K. A., Young, J., Adamson, N., Gascooke, J. R., Jampaiah, D., Sabri, Y. M., Bhargava, S. K., Ippolito, S. J., Lewis, D. A., Quinton, J. S., Ellis, A. V., Johs, A., Bernardes, G. J. L. and Chalker, J. M. (2017), Laying Waste to Mercury: Inexpensive Sorbents Made from Sulfur and Recycled Cooking Oils. Chem. Eur. J.. doi:10.1002/chem.201702871 (本文を読むにはアクセス権が必要です)
  •  フリンダース大学の発表資料  Cooking up new ways to clean up our planet (August 8,
    2017)
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2017年7月のワイリー理工書ベストセラーはこちら!

日本で7月に最もよく売れたWiley(Wiley-Blackwell, Wiley-VCHを含む)の理工書トップ5をご紹介します。タイトルまたは表紙画像をクリックすると、目次やサンプル章(Read an Excerpt)など、詳しい内容をご覧いただけます。

1位 Physics of Semiconductor Devices, 3rd Edition
 Simon M. Sze, Kwok K. Ng
 ISBN: 978-0-471-14323-9
 Hardcover / 832 pages / October 2006

半導体デバイスに関する古典的教科書です。

2位 Physics for Radiation Protection, 3rd Edition
 James E. Martin
 ISBN: 978-3-527-41176-4
 Hardcover / 670 pages / March 2013

放射線防護従事者をめざす学生への豊富な教育経験から生まれた本書は、研究者や実務家が放射線防護の物理学的基礎を正確に理解し、必要に応じてデータを参照できるよう配慮されています。物理学の初歩的な知識しかもたない読者でも理解できるよう書かれ、核図表の読み方に始まり、放射線防護に関する主要な概念、放射線量などの計算法を丁寧に解説します。主な放射性核種の壊変図式などデータ・図表も豊富に収録し、また福島第一原発を含む過去の原発事故例についても記述しています。

Fault Zone Dynamic Processes: Evolution of Fault Properties During Seismic Rupture3位 Fault Zone Dynamic Processes: Evolution of Fault Properties During Seismic Rupture
 Edited by Marion Y. Thomas, Thomas M. Mitchell, Harsha S. Bhat
 ISBN: 978-1-119-15688-8
 Hardcover / 306 pages / June 2017

地震を引き起こす、断層帯における破壊過程に関する最新知識を、学際的見地から総合的・体系的に解説します。

Spatial and Spatio-temporal Bayesian Models with R - INLA4位 Spatial and Spatio-temporal Bayesian Models with R - INLA
 Marta Blangiardo, Michela Cameletti
 ISBN: 978-1-118-32655-8
 Hardcover / 320 pages / April 2015

空間統計学とベイズ的手法を統合し、実用的かつ革新的な方法で読者に提示する一冊です。疫学・生物統計学・社会科学から数多くの実例を採り、R言語パッケージR-INLAで記述しています。

Causal Inference in Statistics: A Primer5位 Causal Inference in Statistics: A Primer
 Judea Pearl, Madelyn Glymour, Nicholas P. Jewell
 ISBN: 978-1-119-18684-7
 Paperback / 160 pages / March 2016

データ解釈において重要な「因果推論」の概念を平易な表現と事例によって解説し、政策・医療・教育などの領域への応用法を教える新しい入門書。著者ジューディア・パールは、構造モデルに基づく因果的・反事実的推論の理論を発展させるなどの業績で知られ、2011年のACMチューリング賞を受賞した当分野の世界的権威です。


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<記事紹介> レイチェル・カーソンは間違っていたか? 殺虫剤DDTの功罪をめぐる議論を再検討(ACIEエッセイ)

Credit - Huntstock/Getty Images

Credit - Huntstock/Getty Images

殺虫剤DDTといえば、日本人には終戦直後の子どもたちが頭から大量の白い粉をかけられる映像でなじみ深いでしょう。チフスなど命にかかわる感染症を媒介するケジラミを駆除するために進駐軍が用いたもので、当時の日本人の健康を守る上で大きな役割を果たしました。その一方で、DDTのことを米国の作家レイチェル・カーソンとその代表作『沈黙の春 (Silent Spring)』とともに思い出す人も少なくないはずです。

DDTは1874年に初めて合成が報告された後、1939年になってスイスの化学者ミュラーが殺虫作用を発見、マラリアやチフスの拡大防止に貢献したことで1948年、ミュラーにノーベル化学賞をもたらしました。その後DDTは、安価な農薬として農地や森林に大量に散布されるようになりましたが、カーソンは1962年に出版した『沈黙の春』で、DDTをはじめとする農薬が環境中に残留し生態系の破壊をもたらす危険性について強い警告を発しました。ベストセラーとなった同書は当時の環境運動に大きな影響を与え、1972年には米国で農薬としての使用が禁止されました。同様の動きは世界各国にも広がり、2001年に採択された残留性有機汚染物質に関するストックホルム条約でもDDTの使用が規制されています。

しかし、カーソンの主張に対しては当初から反対意見があり、近年は「DDT使用規制のせいで開発途上国でのマラリア流行を防げず、数百万人が命を落とした」としてカーソンを殺人者呼ばわりする声すら高まっています。先にDDTの新しい結晶多形についてAngewandte Chemie International Edition (ACIE) で報告したニューヨーク大学のMichael Ward, Bart Kahr両教授らは、DDTの功罪を再評価し、カーソンとその批判派の主張の是非を検討するエッセイを同誌で発表しました。

Angewandte Chemie International Edition エッセイを読む  J. Yang, M. D. Ward, B. Kahr, Abuse of Rachel Carson and Misuse of DDT Science in the Service of Environmental Deregulation. Angew. Chem. Int. Ed. 2017, 56, 10026. (2017年8月18日現在無料公開中)
 紹介記事  Fake News and Chemistry: From DDT to Climate Change (June 22, 2017, Chemistry Views)

このエッセイで著者らは、一貫してカーソンの主張を支持しています。DDTが害虫駆除に有効なのは事実ですが、その効果は一時的で、使用を続ける間に害虫が耐性をもつようになるため効果を失うことが知られています。実際、WHO(世界保健機関)は保健衛生の目的に限定してDDTの使用を推奨していますが、害虫に耐性をもたせないために他の殺虫剤と交互に用いるべきとしています。著者らは、DDTはかつて信じられていたような魔法の薬ではなく、せいぜいさまざまな方法の組み合わせによる感染症対策のひとつのピースに過ぎないと考えます。同時に、カーソン自身も感染症対策のための殺虫剤使用を否定しておらず、その過剰な使用に反対しただけだとしています。

さらに著者らは、カーソンへの批判派がDDTの安全性の根拠として今も頻繁に引用する「DDTを添加した餌を与えられたキジでは、そうでないキジよりも卵の孵化率が高まった」という1956年の報告を再検討し、批判派が元データに対して恣意的な操作を行っていることを指摘します。著者らは、『沈黙の春』が環境政策に影響を与えることができた時代には、科学と科学者が一般国民から信頼を得ていたのに対して、そのような信頼が低下した現代ではカーソンに対する科学的根拠を欠いた中傷がはびこるようになったと指摘してエッセイを締めくくっています。

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<論文紹介> 「生分解性プラスチック」は水中で分解するか / 実験では種類によって大きな差 (オープンアクセス)

Credit - National Geographic RF/Getty Images

Credit - National Geographic RF/Getty Images

環境中に残る細かいプラスチック粒子「マイクロプラスチック」が、特に海洋の環境汚染の原因として近年クローズアップされています。それに対して、環境中で自然に分解する生分解性プラスチックの使用が対策になると主張する向きもありますが、賛否両論があるのが現状です。

独バイロイト大学の研究グループは、生分解性プラスチックとして市販されている製品が水中で分解するかどうかを確かめるための実験を行いました。同グループは、PLGA, PCL, PLA, PHB, Ecoflexの5種と、比較のため生分解性ではないPETを実験対象に選び、同条件下で人工海水と淡水のそれぞれに1年間にわたって浸し、分解の度合いを調べました。

その結果、5種の生分解性プラスチックの中でPLGAだけが、1年以内(270日)に完全に分解しました。それ以外では、PHBが1年間で8%未満分解したのを除いては、PETと同様に全くないしほとんど分解しませんでした。また海水中と淡水中とでは、分解速度に目立った違いはありませんでした。生分解性プラスチックと称される素材が等しくマイクロプラスチック問題の解消に役立つわけではないことを実証するものとして注目されます。

この研究結果を報告する論文 “Fate of So-Called Biodegradable Polymers in Seawater and Freshwater” は、環境・エネルギーなど地球規模の課題を学際的に取り上げるオープンアクセス誌 Global Challenges に掲載されました。

Global Challenges 論文  A. R. Bagheri, C. Laforsch, A. Greiner, S. Agarwal, Global Challenges 2017, 1, 1700048. https://doi.org/10.1002/gch2.201700048 icon_open (オープンアクセス)
 紹介記事  How Degradable are Biodegradable Polymers in Water? (August 12, 2017, Materials Views)

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