<論文紹介> マウス細胞内で3価クロムが発がん性の6価クロムに変化 / 糖尿病に効くとされるクロムサプリの長期使用に警鐘 (ACIE VIP)

Credit - jo unruh/iStockphoto

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クロム(Cr)を含むサプリメントは、血糖値を引き下げ2型糖尿病の症状を改善する効果があるといわれ、米国などで広く販売されています。しかし、その摂取の必須性や効能・安全性については、研究者の間で意見が分かれています。クロムは通常の食事で必要量を摂取できるので、サプリとして摂取する必要はないというのが代表的な反対意見です。

そういったサプリに含まれるクロムは、無毒な3価クロム(Cr(III))で、かつて日本でも土壌・地下水汚染問題を引き起こした6価クロム(Cr(VI) )とは異なります。6価クロムは強い毒性・発がん性を持ち、取り扱いに厳重な注意を要する物質です。

3価クロムの作用については、クロモデュリンと呼ばれる体内のオリゴペプチドと結合することによってインスリンの作用を増強し、血糖値を下げるというメカニズムがこれまでの研究で明らかにされました。豪シドニー大学のPeter A. Lay教授らのグループはこのほど、3価クロムと結合したクロモデュリンのモデル化合物をマウスの脂肪細胞に投与した後、蛍光X線分析法(XRF) とX線吸収端近傍構造(XANES)測定と呼ばれる手法で分析を行いました。その結果、3価クロムとともに5価および6価クロムが検出され、3価クロムの一部が細胞内酸化反応によって5価・6価クロムに変化したことが分かりました。

Lay教授らは、人がクロムサプリを摂取した場合も細胞内で同様の反応が起こる可能性があり、長期的には6価クロムによる発がんリスクが懸念されると考え、動物実験や疫学的研究による確認を急ぐよう主張しています。今回の実験結果を報告する論文はAngewandte Chemie International Editionに掲載され、同誌の注目論文VIPに選ばれました。

Angewandte Chemie International Edition

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