<論文紹介> Pt粒子触媒が溶液中を自走して反応効率アップ / NaBH4溶液からの水素発生速度を9.2倍に (ACIE Hot Paper)

Credit - Dino Ablakovic/iStockphoto

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温室効果ガスを排出しないクリーンなエネルギー源として水素が注目されていますが、非常に軽い気体であるため、貯蔵・輸送の効率が悪いのが難点です。そのため、水素を高密度で貯蔵できる水素貯蔵技術の開発に向けて各国の研究者がしのぎを削っています。

現在有望視されている水素貯蔵材料の候補物質に「水素化ホウ素ナトリウム」(NaBH4)があります。NaBH4はアルカリ溶液中で安定性が高く、金属触媒によって迅速に水素を放出します。その際、金属触媒は薄膜やナノ粒子の形で用いられるのが一般的ですが、反応から発生する水素の気泡や副生成物によって触媒がブロックされ、反応効率を低下させることが課題になっていました。

Credit - vencavolrab/iStockphoto

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カリフォルニア大学サンディエゴ校のJoseph Wang教授らは、白金微粒子(Pt black)の表面のうち半分だけをチタンでコーティングしたヤヌス粒子(材質が異なる2種類の表面領域をもつ粒子)を作製しました。それをNaBH4溶液中に投入すると、触媒反応によって発生した気泡の力で粒子が溶液中を動き回り、「自己推進型マイクロモーター」として働くことが分かりました。

発生した気泡は粒子の運動に伴って表面から離れていくため、反応効率の低下が起こりにくく、水素の放出速度は同じ粒子を固定した場合に比べて約9.2倍となりました。またWang教授らは、この粒子触媒を使った水素-酸素燃料電池を市販の教育用燃料電池カーに搭載し、燃料電池カーの推進に十分なエネルギーが得られることを確かめました。

この成果を報告した論文は、Angewandte Chemie International Edition (ACIE)に掲載され、同誌の注目論文Hot Paperに選ばれました。粒子触媒や燃料電池カーが動く様子を収めた動画は、論文のSupporting Informationから見ることができます。

Angewandte Chemie International Edition

  •  論文  Singh, V. V., Soto, F., Kaufmann, K. and Wang, J. (2015), Micromotor-Based Energy Generation. Angew. Chem. Int. Ed.. doi: 10.1002/anie.201501971 (本文を読むにはアクセス権が必要です)

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