多発性硬化症サマーカレッジの発表内容をClinical and Experimental Neuroimmunology特集号で無料公開中


Insights into the Pathogeneses of Multiple Sclerosis Genetics and Environment
2015年8月1日-2日に札幌市で開催された第2 回MS サマーカレッジでの講演を中心にまとめたレビュー集、”Insights into the Pathogeneses of Multiple Sclerosis: Genetics and Environment”がClinical and Experimental Neuroimmunologyから出版されました。全ての論文にどなたでも無料でアクセス頂けますので、この機会に是非ご覧ください。

本サマーカレッジの学長を務められました、菊地誠志先生(北海道医療センター 院長)から本特集号のご紹介頂きました。本文と併せてご一読ください。

  無料公開中  
Clinical and Experimental Neuroimmunology 第6巻s1号

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北海道医療センター 院長 菊地 誠志先生によるご紹介

 第2回 MS サマーカレッジは,平成27年8月1日と2日の両日,札幌で開催されました。講演者の方々の何人かに,ご講演内容をレビュー論文としてご執筆いただき,Clinical and Experimental Neuroimmunology(CENI)誌の supplement号としてまとめました(執筆者は目次参照)。第1回MS サマーカレッジが開催される前の 12年間,多発性硬化症の研究,診療に携わる医師たちは年に1度集い,お互いの成果を発表し,研鑽を積み,親交を深めてきました。そのMSワークショップが,平成26年にMS サマーカレッジとしてリニューアルされ,引き続き多くの医師,研究者の集まる場が提供されています。

 第2回 MS サマーカレッジのテーマは,Insights into the Pathogeneses of Multiple Sclerosis: Genetics and Environmentとしました。主な講演について,以下に紹介します。

 多発性硬化症の原因は何か?という問に対しては,免疫学的および神経生物学的なイベントの連鎖で答えることができます。一方,これらのイベントのトリガーとなる因子およびそれぞれのイベントをつないでいる因子は何か?という問へは,疫学的,遺伝学的研究が膨大なデータを供給してきました。

 歴史的に見ればまず,疫学的研究が地域別有病率の違いを明らかにし,移民研究と相まって,環境因子,特に緯度・日照時間・ビタミンDの関与が提唱されました。疫学研究の早期に既に,感染因子,特にEBウィルスの感染歴の関与が示唆され,そこへhygiene hypothesis,さらには基礎免疫,特に腸管免疫の研究からの知見も加わって,腸内細菌叢の研究が注目を集めるようになりました。今回は,Douglas Goodin先生(University of California, San Francisco)に,疫学研究の概説をお願いしました。併せて,EBウィルス研究の第一人者である藤原成悦先生(独立行政法人国立成育医療研究センター),腸管免疫の権威である大野博司先生(理化学研究所総合生命医科学研究センター)にご講演いただきました。大野先生のご講演に先立ち,MSと腸管免疫について奥野龍禎先生(大阪大学大学院医学研究科)にお話しいただきました。

 一方,免疫学の進歩のなかで免疫遺伝学の重要性がクローズアップされ,これが多発性硬化症研究の分野でも発展しました。さらにhigh throughput遺伝子解析技術が情報科学のサポートもあって飛躍的に発展し,まさに膨大なデータを駆使して遺伝学的研究が推し進められてきました。一方,common disease common variant仮説に基づく研究の限界も指摘されています。多発性硬化症に限らず,common diseaseの遺伝子研究におけるmissing heritabilityの問題が云われ,「MS genetics – is the glass half full, or half empty?」と題した総説も発表されました。しかし,遺伝子研究の手法はさらに進化を続け,その知見が,病因解明,治療法開発・創薬につながることは,近い将来のことに思われます。日本人を含む人種別の解析は,治療・創薬に加え副作用コントロールの観点からも重要です。多発性硬化症の免疫遺伝学の現状と将来について松下拓也先生(九州大学医学部医学研究院)にご講演いただきました。

 遺伝子と環境の相互作用という観点からは,エピジェネティックス分野の研究が多発性硬化症でも行われています。Monozygotic discordant twinでの研究は大いに期待されていますが,現時点では驚くべきほどの成果は発表されていません。今回は,宮﨑雄生先生(国立病院機構北海道医療センター)から多発性硬化症におけるエピジェネティックス研究の概説をお話しいただいた後に,精神疾患という異分野におけるエピジェネティックス研究を,岩本和也先生(東京大学大学院医学系研究科)にご紹介いただきました。多発性硬化症におけるエピジェネティックス研究の可能性について考えてみるよい機会になりました。

 教育講演では,中島一郎先生(東北大学大学院医学系研究科)に,最近のホットトピックスのひとつであるanti-myelin oligodendrocyte glycoprotein (MOG) antibody-related diseaseについてのご講演をいただきました。

 本州の猛烈な暑さを忘れ,リラックスした雰囲気の中で,第2回MSサマーカレッジは盛会の内に終了しました。来年の第3回MSサマーカレッジは神戸での開催が予定されています。

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カテゴリー: 免疫学, 神経医学, 神経科学   タグ:   この投稿のパーマリンク

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