 このほど北海道大学触媒化学研究センター・福岡 淳教授の研究室は、二酸化ケイ素を材料とする多孔性物質「メソポーラスシリカ」MCM-41に担持させたPt触媒が、農産物の保存の妨げとなるエチレンの酸化除去を低温下でも効率よく進行させることを発見し、その成果をAngewandte Chemie International Editionに発表しました。
このほど北海道大学触媒化学研究センター・福岡 淳教授の研究室は、二酸化ケイ素を材料とする多孔性物質「メソポーラスシリカ」MCM-41に担持させたPt触媒が、農産物の保存の妨げとなるエチレンの酸化除去を低温下でも効率よく進行させることを発見し、その成果をAngewandte Chemie International Editionに発表しました。
 ⇒ Jiang, C., Hara, K. and Fukuoka, A. (2013), Low-Temperature Oxidation of Ethylene over Platinum Nanoparticles Supported on Mesoporous Silica . Angew. Chem. Int. Ed.. doi: 10.1002/anie.201300496
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■ この成果は、化学ニュースサイトChemistry Viewsで注目論文として取り上げられました。 ⇒ Catalyst Keeps Fruit Fresh Longer (Chemistry Views, May 13, 2013)
工業原料として広く用いられるエチレンは、一方で植物ホルモンとして、バナナなどの果実や野菜・花の成熟を促進する作用を持つことが知られています。例えばリンゴの実はエチレンガスを放出する性質を持つため、冷蔵庫内で野菜と一緒に保存すると、野菜の成熟が進み変色や傷みを早めてしまうのでよくないとされています。流通業者にとってこの問題はさらに深刻で、果実などの農産物を長期保存しようとする際に、中にエチレンガスを出す果実があると、周りの農産物の劣化が早まり保存期間を縮めてしまいます。エチレンの成熟促進作用はごく微量でも働くため、農産物の鮮度を保ったまま長期保存するためには、エチレンを極力完全に近い水準まで除去することが求められます。
しかし、これまでに微生物や光触媒、Au触媒などを使ったさまざまな方法でエチレン除去が試みられてきましたが、高コストや効率の悪さなどの難点がつきまとい、有効な方法は見つかっていませんでした。とりわけ難しいのは、農産物を保存する低温下でエチレン除去の反応を効率よく進行させることで、この問題にかかわる研究者たちを長年悩ませてきました。
福岡教授らは、Pt, Pd, Au, Agなどの金属とさまざまな担体を組み合わせた触媒を調製し、性能を比較した結果、メソポーラスシリカMCM-41に担持させたPtが、低温下でのエチレンの酸化除去に最適な触媒として働くことを確認しました。冷蔵庫内に近い0℃の低温下で実験したところ、濃度50 ppmのエチレンを99.8%除去することに成功し、過去最高の変換効率を達成しました。担体が反応機構にもたらす影響など、今後のさらに詳しい解明が待たれます。
 
								




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