<論文紹介> NMR分析で天然・養殖サーモンの判別に成功|燻製・缶詰に加工後も有効、偽装表示対策として期待

サーモンの中でも最も一般的なタイセイヨウサケ(アトランティックサーモン)は、他の多くの魚介類と同様に、天然ものが養殖ものより上質とされ、2~3倍の価格差があるそうです。各国で天然・養殖の区別や産地の表示義務を定めていますが、悪質な業者による偽装表示が後を絶ちません。

このほどLipid Technology誌に発表された論文で、オランダ・ワーゲニンゲン大学の研究グループは、サーモンの身の脂質のスペクトルを1H NMR(プロトン核磁気共鳴)で測定し、得られたデータをSIMCA法で解析することにより、天然ものと養殖もののサーモンを100%の精度で判別することに成功したと報告しました。
 ⇒ Capuano, E., Lommen, A., Heenan, S., de la Dura, A., Rozijn, M. and van Ruth, S. (2012), Wild salmon authenticity can be predicted by 1H-NMR spectroscopy. Lipid Technology, 24: 251–253. doi: 10.1002/lite.201200235 (無料公開)

同グループによると、養殖サーモンにはオレイン酸・リノール酸が天然ものより多く含まれることが、判定の大きな決め手となるそうです。実験では、生や冷凍のサーモンだけでなく、燻製(スモークサーモン)や缶詰に加工したものも含めたサンプルで、誤りなく天然・養殖を判別することに成功しました。過去には同様の手法で未加工のサーモンの身を対象にした成功例が報告されていますが、加工品で成功したのは今回が初めてとのことです。偽装表示対策としての実用化が期待されます。

カテゴリー: 論文 パーマリンク