<論文紹介> メラミンフォームをベースにした廉価な電極材料の開発に成功|性能は白金触媒に匹敵、燃料電池・金属空気電池向けの商業化に期待(Angew. Chem. Int. Ed.)

次世代の電池として期待される燃料電池や金属空気電池では、その重要な構成要素である電極の材料として、触媒性能の高い白金を用いたものが現在主流になっています。しかし、白金は高価で希少なため、それに代わる材料を見つけようとさまざまな試みがなされています。

電極材料の選択において重要なポイントは、電極内の物質移動が滞らないようにすることです。韓国の蔚山(ウルサン)科学技術大学校と米ジョージア工科大学の研究者によるチームは、海岸に見られるテトラポッドの防波堤ではコンクリートの「足」の間を水が自由に行き来できることにヒントを得て、テトラポッドと似た構造を持つ多孔質のメラミンフォームの利用を思いつきました。

同チームは、熱分解したメラミンフォームと高性能のカーボン微粒子であるケッチェンブラックをベースにして、貴金属を使わない廉価な材料で触媒を製造することに成功し、その成果をAngewandte Chemie International Editionで報告しました。この新しい触媒の電気化学的性能は、低過電圧では従来の白金触媒に匹敵し、高過電圧では白金触媒を上回ることが実験で確認されました。製造工程も容易であることから、開発にあたった研究者らは、今回の成功が廉価で大量生産可能な電極材料の実現につながることを期待しています。

■ 論文はこちら (本文を読むにはアクセス権が必要です)
 ⇒ Lee, J.-S., Park, G. S., Kim, S. T., Liu, M. and Cho, J. (2012), A Highly Efficient Electrocatalyst for the Oxygen Reduction Reaction: N-Doped Ketjenblack Incorporated into Fe/Fe3C-Functionalized Melamine Foam . Angew. Chem. Int. Ed.. doi: 10.1002/anie.201207193

■ 化学ニュースサイトChemistry Viewsの紹介記事 ⇒ Chemistry Views: Inspired by a Breakwater

カテゴリー: 論文 パーマリンク