 Angewandte Chemieの名物編集長Peter Gölitzは、雑誌や論文・研究者の価値をすべてインパクトファクター一本で評価しようとする「インパクトファクター至上主義」とも言うべき風潮をたびたび批判していますが、このほど同誌に掲載されたEditorialでもこの問題を取り上げています。記事中では“Impact Factor mania”という表現を使い、そのような考え方をナンセンスと断じています。
Angewandte Chemieの名物編集長Peter Gölitzは、雑誌や論文・研究者の価値をすべてインパクトファクター一本で評価しようとする「インパクトファクター至上主義」とも言うべき風潮をたびたび批判していますが、このほど同誌に掲載されたEditorialでもこの問題を取り上げています。記事中では“Impact Factor mania”という表現を使い、そのような考え方をナンセンスと断じています。
 ⇒ Gölitz, P. (2012), Impact Factors, Open Access, and 125 Years of Angewandte Chemie. Angew. Chem. Int. Ed.. doi: 10.1002/anie.201206849 (無料公開)
特に注目していただきたいのが、この記事中の2点のFigureです。Figure 1は、ACIE, JACS, Nature Chemistryなど代表的な化学誌について、それぞれの2011年インパクトファクターと、その算出に使われた2009・2010年の論文数およびそれらの被引用回数をグラフにしたものです。JACSは、インパクトファクターではNature ChemistryとACIEを下回っていますが、後者2誌よりも出版する論文数が多いため、被引用回数を絶対数で見ると両誌を上回っています。被引用回数の一論文あたり平均値であるインパクトファクターが最も高い(しかし論文数は少ない)Nature Chemistryと、被引用の絶対数が最も多いJACSと、どちらが雑誌としての「インパクト」が高いかというと、簡単には言えません。結局、インパクトファクターを唯一絶対の尺度と考えるのではなく、さまざまな要素と併せて考慮すべきひとつの指標として、相対的にとらえる視点が必要ということでしょう。
一方Figure 2は、B. シャープレスらが「クリック・ケミストリー」の概念を初めて提示した画期的な論文3報(2001~02年)を例にとり、年ごとの被引用回数の推移を示したグラフです。インパクトファクターは、該当年の前年および2年前に出版された新しい論文の被引用回数に基づいて算出されるため、出版から3年・5年と経って初めて真価を認められ引用されるようになった論文は、その雑誌のインパクトファクターにあまり貢献しません。「クリック・ケミストリー」の論文もまさにその例であることをグラフは示していますが、インパクトファクターに貢献しなかったというだけの理由で、これらの論文の「インパクトが低い」という人はまずいないでしょう。
Peter Gölitzの「ACIEに載る論文の質が高いのは、ACIEのインパクトファクターが高いからではなく、多くの著者が優れた論文を投稿し、査読者と編集者が丁寧に評価し、編集の過程でさらに磨きをかけているからだ」という言葉には、ACIEを長年かけて育て上げた編集長としての矜持と自信が感じられます。
ところで、このEditorialの表題中に”125 Years of Angewandte Chemie”とありますが、Angewandte Chemie(英語版より先に始まったドイツ語版)は来年2013年に創刊125周年を迎え、それを記念して3月12日にベルリンでシンポジウムを開催します。記事をご覧いただくと、錚々たる顔ぶれの講演者の中に、京都大学の北川進先生のお名前もあります。聴講できる人が羨ましいですね!
また最後のP.S.にもありますが、Angewandte ChemieのiPad用アプリ(無料)をぜひお試し下さい。このアプリが好評だと、ほかのジャーナルもアプリ化を進めていくようです。
 
								




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